michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

はじまり 小田原氏への返歌

 

道 ケージ

 
 

あの遺影は誰?学生服姿の屈託ない笑いと今どきでない髪型に駆け寄り教室に入るも皆ブルホをやめずそんなことはよせと亀甲を結ぶとその一点は完全なる凝集朝の光吸い込まれ泥をぬぐう深い沈降であるがまた不帰の道行く途中金色の鹿たちは群れなして移住するその瞳に吸い込まれるしかない銀の階段は降りづらくさらに奥へと折り畳まれ発熱の余地なくそれが彼女なのかたくさんの襞折り畳まれ折り畳まれ降りては祈り祈っては折れるこれがカラビ‐ヤウ空間だよ膜は何重にも織り込まれゆっくりと高熱回転しているそんな弦の粛清の後月に向かう南部先生チトフ来なさい予備なのだから動かずに待つしかない赤い飛行体を見上げ白線が空に消えオイと呼ばれる衝突寸前まで綱の上のバッタ水滴に溺れるクジラ一瞬の海溝薄く祥瑞片手に誰待つ割れる十一次元紗綾形格子突如凍結静止から労働歌革命「ツキに見放されたら遠くを見る女の瞳」まあ待てバティ・ガイのソロ無限割る無限は一なんて爆裂弾で完全数を蒸発させる熱はカムランからアヴェロンへ逃走絶対やっちゃるって誰をよベルベル人の装身具なんだよお前はさあホトケノザでアンフォラ飲み干せエウフロニオスご苦労さまはい

 

 

 

ひとばな

 

萩原健次郎

 
 

 

私が 逸した
私の 逸した
私を 逸した

人がたの 生存の おと きこえたら
まっくらの 洞から声はって
返事 ください

逆さまの えだはの 蔭で
泣き通して 水 涸れました

ごめんなさいという たま じんこん

私が 逸した

野に放つ 川に流す ちいさなむくろ かざってね

紅花 ひろってこ
黄花 あげよかねえ

はやくはやく ほろんでくださいね
みんな死ね って言うやろ
生きてやる ってかえしてね

死んでも 死なないで
ほろんでね
綺麗でね。

あなたはあなたひとりの
綺麗な
人花

 

 

 

ほんとうの窓が

 

駿河昌樹

 
 

だれにも媚びないことばを
まだ
記せる?

どれだけ?

そう思って
ここにも
ことばを記してみる

認められたがりのことば
買ってもらいたがりのことば
覚えてもらいたがりのことば
こころに留めてもらいたがりのことば

そんな商売ことばたちだけに
なってしまった地上で
まだ
あり得るのか
けっして奴隷になることのない
ことばは

たゞの逡巡としか見えないことばや
急ぎのメモ書きのことばこそが
まだ知らぬ
どこかのひろびろとした草原への
窓のように見える

だれをも動かそうとしないことば
だれをも誘導しようとなどしないことば

そんなことばたちがほしい

たゞ
窓がほしいために

ほんとうの窓が

 

 

 

また恋文したくなってきている

 

駿河昌樹

 
 

ひとにわかりやすいものを書くひとたちの
書いたあれこれ
ちょっと時間つぶしのあいだに
読んでみていて

…やっぱり
辟易してしまった

わかりづらいものへ
わかり得ないものへ
ことばを並べながら手さぐりしていく
高原の空気のようなひとたちへ

また
恋文したくなってきている

 

 

 

新・冒険論 06

 

今朝
雨が降っている

夜中にモコに起こされた

雨の庭で
モコにおしっこをさせた

それからソファーに横になったが

眠れなかった
波多野睦さんの冬の旅を聴いた

ただこの世の生を受けた

南天の白い花がひとつひらいた
昨日

着想はなかった
着想もなく生を受ける

生に着想はない

 

 

 

花のアップを取り損なった

 

鈴木志郎康

 
 

咲きそろった
庭の
ビョウヤナギの黄色い花々。
その一つを
アップで撮ろうしたが、
身体がふらふらして、
しっかりと立って
居られないので、
花が
ズームした
画面から外れて、
アップの写真が
撮れない。
ふっと、
感情が
湧き起こる。
この感情は、
初めての経験。
まさに経験。
できなくなった、
身体の経験なんだ。
どうしょうもないね。
庭の花も、
わずか五メートル
離れた
遠くから
眺めてるだけ、
ってこと。

(実はわたしは、
若い頃、
プロフェッショナルな
カメラマンだったのだ。
ふむ、ふむ。)