michio sato について

つり人です。 休みの日にはひとりで海にボートで浮かんでいます。 魚はたまに釣れますが、 糸を垂らしているのはもっとわけのわからないものを探しているのです。 ほぼ毎日、さとう三千魚の詩と毎月15日にゲストの作品を掲載します。

この夏

 

正山千夏

 
 

早すぎる夏
降りすぎた雨
昇りつめる温度計
この夏のはじまりは
爆発した

ただただ右往左往し
蝉もまだ鳴きださない
窒息した夏を
ばたばた搔きまわす
私の四肢

丸い月の夜には
ざわざわうごめく空気に
バランスを崩し
なにかがひっくり返って
あふれだしたものを
なすすべもなく
なかばやけっぱちに
浴びるばかり

泳いだあとのような
からだのだるさが
左半身に残る
傾いだなにかが
寄りかかるものは
そこにはなかった
またはもう消えていた
否、はじめからなかったのか

不意をつかれどおと倒れて
死んでしまったのかも
この夏
なにかが

 

 

 

子どもだったあとの大人は

 

ヒヨコブタ

 
 

母の叶えたかった夢を
そのまま背負った子どものわたしたちは
同じものを食べて育ったけれど
まったく異なる世界をみて大人になったんだね
長い間
話がつうじあわずに遮断が起きてしまったね
壁の向こうのあなたたちになにを言おうと伝えようと
忙しいとそんなはずはないの繰り返しさね

昔どこかでみた景色を
大人になってから追体験している気がしてるんだよ

大切の押し売りはいらないよ
あなたの大切はそのままでいいさ

わたしの大切はすべて渡すことはないんだよ
けれどもさ
少しのおすそわけでよかったらわけることなんてたやすいんだ

知らないひと同士が話すのが聞こえる外は
挨拶も優しくてね
暑さの限界を超えてしまったような日も
少しだけ気持ちが緩むんだよ

見えなくて怖いから論破したい気持ちは素直なのかもしれないよ
でもさ
好きじゃないんだそれだけさ

すべてに完全同意がなくたって
少しの重なりで生きていけたらさ
また会えたらそれでいいってさ

横たわり頭を冷やしながら
湯豆腐に近い脳みそをぎりぎり冷ますのを思い浮かべて
静かに息をするよ

 

 

 

新・冒険論 11

 

工藤さんに
売れないですねといった

脱システムは売れないですねといった

なにも応えなかったが
工藤冬里さんの音楽は脱システムだろう

マイナー音楽は売らない

物語を
売らない

わたしではなくあなたでもない

佇ち
歩き

バスに乗りバスを降りる

光っていた
流れていった

 

 

 

覗かれる気分

 

辻 和人

 
 

また君かぁ
こんにちはー
直下から
覗かれる

魚の目
右の足の裏の真ん中からちょっと上辺り
定期的にできる
左にはできない
重心が右足前方に傾く歩き方の癖の
分身なんだね

椅子に座って調べてみよう
よいしょ、靴下脱いで足裏を膝の上に乗せる
ふむふむ
小さな細長い楕円
指で突いてみると
そこだけ皮が厚く硬くなってる
ツルツルした感触だ
ちょっと面白い
ズッ
ズッ
大きくなるのを日々感じてはいたんだけど
ズキッ
今日、遂に開いちゃった

魚の目
ズキッ
ズキッ

うぉー、こんにちはー
君かぁ
さあ、立ってみましょう
それから、足踏みしてみましょう
イチニ、イチニ
直下から
ズキッ、ズキッ
視線が登ってくる
「今週仕事きつかったな、明日は寝坊するか。」
ズキッ
覗かれちゃった
あーあ、いつも通りに起きるか
「そろそろ暑中見舞い出さなきゃいけないなあ。」
ズキッ
覗かれちゃった
はいはい、今夜お風呂に入る前に書きますよ
直下から
ぼくの内部を覗きにくるんだよ
だからどうだってことはないんだけどさ

魚の目

ズキッ
視線の強さに
きょろっ、思わず辺りを見回す
しーん
椅子とパソコンとカーテンしかない
でもでも、いる
直下に、いる
一言も喋らないけど
ズキッ、ズキッ
存在を主張しているぞ
ちょっと面白い
ちょっとかわいい
さっきしげしげ眺めた
小さな細長い楕円
特に魚に似ているわけでもない

魚の目
「いつものようにナイフで削り取ってしまおうか。」
ズキッ
覗かれちゃった
わかった、わかった、わかりました
しばらく直下から覗かれるままにしておこう

魚の目、と
ズキッ
ズキッ
2人きりの時間を楽しむんだ

 

 

 

そこに世界が在るならば

 

狩野雅之

 
 


そこに世界があるならば
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ここに反世界があるわけさ
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メタファーは好きだけれど、メタファーは撮らない
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メタファーは世界を表すが、世界はメタファーではない
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リアリティとは「それが・そこに・ある」という「事実」のことではない
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リアリティとは単に「ある」ということである
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