久しぶりの詩を書いたってわけ。

 

鈴木志郎康

 
 

ベッドでテレビ見てて、
あくびしちゃった。
眠くなって、
眠っちゃった、
眠っちゃった。
で、それで
眠っちゃった、
という言葉が
想い浮かんだんだね。
テレビでやってたのは、
座間の九人殺害事件容疑者白石隆浩容疑者のことばっか、
自殺願望のある女たちを部屋に誘い込んで殺したってことばっか、
初来日のイバンカ・トランプ大統領補佐官のことばっか、
薄いブルーのコートで羽田空港に降り立ったってばっか、
あくびが出て、
眠っちゃった、
という言葉になって、
ここに、
書き留めたってわけ。
いやぁ、
久しぶりの詩を
書いたってわけ。

 

 

 

勝手に孫の中学生の鈴木ねむちゃんに代わっての短歌 その二

 

代作 祖父のシロウヤス

 
 

麻理母さんちの庭に
水を撒いたら
百合の花が笑った
お母さんと同じ名前の花

坂道を自転車で
すーいすーい
気持ちいい
わたしは重力

世界史って戦争ばかり
日本の平和を七十年を生きた
女の人を
漫画で描きたいわ

 

 

 

勝手に孫の中学生の鈴木ねむちゃんに代わっての短歌 その一

 

代作 祖父のシロウヤス

 
 

お姫様
目に涙を描くと
キューンと
こころが痛む

わたしが
絵を描くと
みんなが褒めてくれる
どんどん描いちゃう

自転車の後輪は
前輪にいつも素直に従ってる
二人の仲は
本当なの

 

 

 

勝手に孫の小学4年生の鈴木はなちゃんに代わって俳句10作

 

代作 祖父のシロウヤス

 
 

大雨や
夜遅くまで
語り合う

運動会
思いっきり
走りたい

運動会
不意の地震に
皆走る

大雪や
登校の朝
すってんころりん

ばあちゃんは
老病介護で
じいちゃんを

分数は
分子と分母
なぜ親子

日本国
菊の御紋が
恐ろしい

コスモスや
漢字で書かれて
はずかしい

組みダンス
大空の下
皆すてき

菜種粒
水吸って芽出す
力 何

 

 

 

俺っち、ぽかーん。

 

鈴木志郎康

 
 

俺っち、
ぽかーん。
庭に紫陽花が咲いている。
ぽかーん、
ぽかーん。

二〇一七年六月二十六日
朝から、
テレビの前のベッドに、
横になって、
ぽかーん、
ぽかーん。
中学三年十四歳の
ブロ棋士
藤井聡太四段が、
前人未到の29連勝の記録を更新するかって、
こっちゃ、
こっちゃ。
俺っち、
ぽかーん。

夜の九時回って、
テレビの速報ってこっゃ。
藤井聡太四段が、
十一時間の対局の末
増田四段に勝ったってこっゃ、
29連勝達成ってこっゃ。
こっゃ、
こっゃ。
テレビ、
新聞、
大騒ぎっちゃ。
地元は地元で、
盛り上ってるってこっゃ
こっゃ、
こっゃ。
俺っち、
ぽかーん、
ぽかーん。

 

 

 

あれれっちゃ

 

鈴木志郎康

 
 

シロウヤスさんが、
パジャマを後ろ前に着て、
こりゃ、いいわい、
って、
ひょろひょろっと、
にわかに
立ち上がって、
部屋の中を、
杖も持たずに、
両手を翼みたく
バタバタさせて、
歩き回ってるっちゃ。
アッ、危ない、
すっ転んじまったっちゃ。
テーブルの角に、
頭をぶつけて、
床に仰向けに
すっ転んじまったっちゃ。
あら、動かないっちゃ。
動かない。
あれれっちゃ。
へへへ。
そんな、
俺っちの空想っちゃ。
歳取るって、
ねええ。

 

 

 

俺っち、三年続けで詩集を出すっすっす。

 

鈴木志郎康

 
 

俺っち、
ここに三年続けて、
詩集を出すっちゃ。
八十を過ぎても、
いっぱい
詩が書けたっちゃ。
俺っち
嬉しいっちゃ。
ウォッ、ホッホ、
ホッ、ホッ。

詩集って、
詩が印刷された
紙の束だっちゃ。
書物だっちゃ、
物だっちゃ。
物体だっちゃ。
欲望を掻き立てるっちゃ。
自分が書いた詩が
物になるっちゃ。
空気の振動が立ち昇ってくる
物体になるってっこっちゃ。
手に取ると、
グッとくる。
ヤッタアとくる。
ああ、その達成感が、
堪らないっちゃ。
ウォッ、ホッホ、
ホッ、ホッ。

この詩集ちう物体は、
人の手に渡るっちゃ。
肝心要のこっちゃ。
詩を書いたご当人が
詩人と呼ばれる、
世の中の
主人公になるってこっちゃ。
ところがどっこい、
世の中の人は、
ヒーローとは認めてくれないっちゃ。
せいぜい、
認めてくれるのは
知人か友人か家族だけっちゃ。
それでも、
いいっちゃ。
この世に、
言葉が立ち昇る、
詩集ちう物体を、
残せるっちゃ。
この世には、
物体だけが、
残るっちゃ。
ウォッ、ホッホ、
ホッホ、ホッホ。

 

 

 

俺っちの家族が皆んな笑ってたっちゃ。

 

鈴木志郎康

 
 

焼け跡で遊んで、
腹へったあ、って、
家に帰ったら、
皆んなが、
大きな口を開けて、
笑ってたっちゃ。
ワッハッハッ、
アッハッハッ、
ハッハッハッ、
ヒョッヒョッヒョッ。
おふくろも、
親父も、
爺さんも婆さんも
兄も、
大口を開けて
笑ってるっちゃ。
おふくろは
身体を二つに折って、
笑ってるっちゃ。
何だか分からないけど、
俺っちも、
笑っちまったっちゃ。
敗戦後の、
一年経った頃のこっちゃ。
笑ってからは、
玄米を入れた一升瓶に棒を突っ込み、
棒を押し込み、
サックザックサックってね、
精米したっちゃ。
夕ご飯は、
かぼちゃ入りのすいとん、
毎日かぼちゃ、
かぼちゃ、
うんちが
黄色くなっちまったっちゃ。
アッハッハッ、
アッハッハッ。

 

 

 

俺っち、国電乗り回し遊びしたっちゃ。

 

鈴木志郎康

 
 

戦後の、
国電がものすごく混んでて、
乗客がはみ出して、
電車の連結器の上の、
鉄板に乗っていた頃に、
俺っちら小学生の間で、
国電乗り回し遊びが、
流行っていたっちゃ。
亀戸から隣の錦糸町までのキップで、
総武線の下り千葉終点まで行って戻るって、
その間に駅名を覚えるっちゃ。
上りは中野終点まで行くっちゃ。
中野駅ホームは夕焼けだったっちゃよ。
途中の秋葉原で山手線に乗り換えて、
山手線を一周するってこともあったっちゃ。
混んでる車内で、
窓ガラスに顔を、
ぎゅっと押しつけられて、
飽かず車窓から眺めてたっちゃ。
錦糸町から歩いて帰る途中に、
覚えた駅名を暗唱するっちゃ。

俺っち、
大人がやってる、
連結器の上の鉄板に、
乗ったことがあったっちゃ。
風にあおられ、
電車が揺れるのが恐怖だっちゃ。
電車が平井を過ぎて、
荒川鉄橋に差し掛かると、
レールの下の、
ずっとずっとずっと下の、
川面のさざ波が
頭に焼きついたっちゃ。
次の新小岩に着くと、
ホームに跳び降りて、
ガクガク震える
両脚を、
抱きしめたっちゃ。

 

 

 

俺っち、ガラスの鉱脈を見つけたっちゃ。

 

鈴木志郎康

 
 

「鉱脈があったぞお」って、
小学四年か五年の
俺っちが
叫んだかどうかは、
忘れちまったが、
敗戦後の焼け跡の
瓦礫の下には、
ガラスの鉱脈があったっちゃ。
掘れば、
ザクザクと
壊れたガラスの破片が
出てくる場所があったっちゃ。
大きなガラス戸が、
戦災の時に焼夷弾で、
焼けて倒れたところっちゃ。
俺っちら子どもは、
そのガラスの破片を掘り出して、
三丁目の小さなガラス工場に売って、
小遣い稼ぎをしてたっちゃ。
ビール瓶や酒瓶の破片は安く、
透明なガラスは高く、
クリーム瓶や花瓶の破片は
一番高く売れたっちゃ。

掘り出したガラスの破片を、
箱に選り分けて、
工場の焼け跡から見つけて来た台車に乗せて、
ガラガラって引っ張って行ったっちゃ。
三円か五円か稼いで、
駄菓子屋に行って、
空腹を満たすってこっちゃ。
駄菓子屋には、
当たりのある籤が売っていて、
「当たれっ」って、
叫んで、
ボール紙に貼りついた菓子を剥がすと、
外れで、
がっかり、
外ればかりだっちゃ。
絶対に当ててやるって
俺っち、
ガラス屑を売ったゼニをはたいて、
その当たり籤をボール紙ごと、
買っちまったのさ。
そうして、
一人で、
外れも、
当たりも、
ひとつひとつ、
剥がして行ったっちゃ。
当たりが出ても、
景品を貰っても、
嬉しくもなく、
ちーっとも、
面白くなかったっちゃ。