余生 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 56     toshimi さんへ

さとう三千魚

 
 

咲いてた

たくさん
咲いてた

ひまわり
咲いてた

たくさん
たくさん

咲いてた

余生を
花で埋める

 
 

***memo.

2024年1月8日(日)、
浜松「八月の鯨」にて、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った56個めの詩です。

タイトル ”余生”
好きな花 ”ひまわり”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

還暦 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 55     ryuji さんへ

さとう三千魚

 
 

初夏
だったか


だった

白い
きみに会った

白蝶草だった

ぼくは
今年

還暦になったよ

また
きみに会いたい

 
 

***memo.

2024年1月8日(日)、
浜松「八月の鯨」にて、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った55個めの詩です。

タイトル ”還暦”
好きな花 ”白蝶草”

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

塔 ***

 

無一物野郎の詩、乃至 無詩! 54     yoshimi さんへ

さとう三千魚

 
 

きみは
どこにいるの

さがして
いる

無い
花を

さがしていた

そこに
いた

塔は立っていた

たっていた

 
 

***memo.

2024年1月8日(日)、
浜松「八月の鯨」にて、
「 無一物野郎の詩、乃至 無詩!」として作った54個めの詩です。

タイトル ”塔”
好きな花  無し

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

声をさがす

 

さとう三千魚

 
 

越せないかと
思った

モコは年を越せないかと思ってた

いつか
雪が降るのを見ていた

日野の駅で
見ていた

ゆらゆら
ゆらゆら

雪は
降りてきた

モコ
ふらふら歩いていった

義母の仏壇の前に
歩いていった

“まんじゅっこ”と義母は呼んでいた

モコ
さがしてた

声をさがしていた
声をさがしていた

モコ
見ていた

モコ
見えないものを見ていた

語るな
語るな

この世に雪は降っていた
この世に雪が降っていた

ゆらゆら
ゆらゆら

降っていた

いつまでも見ていた
歩いていった

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

聴いてる

 

さとう三千魚

 
 

浜松から
帰って

聴いてる

“Into My Arms” *
聴いている

鯨は
いた

珈琲と
音楽と
本と

あればいい

そう
言った

一昨日
horioさん来てくれた

チェロ
弾いてくれた

バッハ
だった

チェロの響きを聴いた

モコを抱いて
眠った

ニック・ケイヴは歌っている

Into my arms, O Lord **
Into my arms, O Lord **

So keep your candles burning **
And make her journey bright and pure **

ともしびだろう

歌は
消えそうだ

だから
繰り返す

歌は無いだろう

だから
繰り返す

無い歌をうたう
無い歌をうたう

 

* ニック・ケイヴの歌曲”Into My Arms”のこと
** ニック・ケイヴの”Into My Arms”から引用しました

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

会いに行った

 

さとう三千魚

 
 

午後に
電車に乗った

会いに
行った

店の前にいた
待っていてくれた

ビートルズが流れていた
ニック・ケイヴを聴かせてくれた

店じまいするのだという
バイクにテントを積んで新潟から北上して北海道に行ったこと
三沢の寺山修司記念館の佐々木さんに会ったこと
南相馬ではその先を断念したこと

話してくれた
話してくれたな

鯨は
いた

そこにいた

帰りの
夜風は冷たかった

ホテルが紫色に立ってた

駅前の
浜松餃子屋でビールを飲んだ

各駅停車で
帰ってきた

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

見ていた

 

さとう三千魚

 
 

昼前に
河口まで歩いた

ノラたちに
会わなかった

海がいた

凪いだ
海がいた

しずかに
風は

流れていた

見ていた
打ち寄せるのを見ていた

波が
打ち寄せていた

何度も
打ち寄せていた

波は岸辺を洗っていた

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

受ける

 

さとう三千魚

 
 

昨日
午後に

隣り駅に降りた

椅子と
手帳と

ちいさなプリンターをカバンに入れていた

北口広場で
ひとり

月の初めの
日曜日

ここで詩を書くことをしている
立ち止まる人に

名前と
好きな花と

詩のタイトルを

手帳に
書いてもらう

それから
その人の

詩を書いてみる

プリントして
渡す

昨日は
だれも

立ち止まってくれなかった

師走の風
寒かったな

過ぎていった
足早に過ぎていったな

地上で
空から降るものを見ていた

てのひらに受ける

無いものを
受ける

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

部屋に入る

 

さとう三千魚

 
 

ワイングラスを探していた

背丈が10cmほどの
吹きガラスの

ワイングラスを
探してた

丸子の

匠宿にも
駅中の駿河楽市にも

なかった

デパートにも
なかった

車を走らせて
探し歩いた

厚く割れない吹きガラスのワイングラスを探し歩いた

帰ったらモコ
居間の絨毯に眠っていた

くの字で眠っていた

夏には弱って歩けなかった
傍にいないといけなかった

今日は

帰って
本のある部屋に入った

アルバート・アイラーの”Deep River”を聴いた *

繰り返し
聴いてた

 

 

* アルバート・アイラーのCD「GOIN’HOME」のなかの曲”Deep River”のこと

 

 

 

#poetry #no poetry,no life

また詩を読む

 

さとう三千魚

 
 

一昨日かな

また
詩を読んでた

そのひとは
コーヒーに砂糖は入れない *

と書いていた

詩にはふたつの川が流れている
故郷の川だろう

遠賀川と
六郷川と

ふたつ流れていた

昨日
高円寺の寺には強く風が吹いていた

詩人の通夜だった

帰りの新幹線で
眠ってしまった

夕方

海浜公園で海を見ていた

看板に
雀たち一列に並んでいた

 

 

* 松下育男さんの詩集「コーヒーに砂糖は入れない」のこと

 

 

 

#poetry #no poetry,no life