たったこれだけのことで

 

駿河昌樹

 
 

低い桐箪笥の上に
さらに桐箱
その上に置いてある
毛布やら
夏掛け布団やら

真冬
というのに

真冬
というのに
寒暖は微妙に変わり続け
布団に毛布では
暑過ぎる時もある
かといって
布団だけでは
やっぱり
寒い

そんな時に
夏掛けが便利と気づいたのは
つい最近のこと
布団の上に夏掛けを
ちょん
布団+毛布に夏掛けを
ちょん
たったそれだけで
ずいぶん変わる
タオルケットも加えれば
調節の目盛りが
細かくなる

夏掛けを使わない時
そして
ひどく忙しい時
桐箪笥の上の桐箱の
さらに上で
夏掛けが
乱れてしまっていることもある
端をきちんとあわせて
ちゃん
ちゃん
と畳めばいいのに
そんななんでもないことが
できないほど忙しく
疲れている時が
なかなか多い

ある日
午後も終わっていく頃
夏掛けの
ちょっと乱れたまゝの畳みようが
ひどく気になり
急がねばならない作業の手を止めて
立ち止ったまゝ
見つめてしまった


布団
きちんと
畳まれていない様は
わびしい

きちんと
端をあわせて
ちゃん
ちゃん
と畳めばいいのに
していない心
できない心
ほんのちょっとの
エネルギーの足りなさ
それが
わびしい

ぱあっと
夏掛けを開き
端と端を
きっちり合わせて
畳み直した
ちゃんと
ちゃあんと
畳み直す

すると
世界は変わった
たった
これだけのことで

むかし
浄霊の勉強をしていた時
邪霊なるものや
悪霊なるものを去らせるには
整理や清掃にあわせて
物の端を真っすぐに
平行線を作りながら
直角を方々に作りながら
きちん
きちんと
隙間を空けながら
焦らず
ていねいに
置く
並べる
それがなにより効く
と知った

それを思い出しながら
ちゃんと
ちゃあんと
畳み直す
端と端を
きっちり合わせて

たった
これだけのことで

 

 

 

始発がカオリ、次ユキコ、ミヨコにリサにミワ、マイコ

 

駿河昌樹

 

 

日本人のくせにクリスマスなんて…とか言いながら
けッこうクリスマス好きだし
全般的一般的総合的にお祭り好きなのを
そろそろ隠さないでもいいかもしれないナ、いい歳なンだから
いまひとつパンプキン…じゃなくッて
ハロゥインには乗り切れないところがあるけれど
パリでアレに出くわした時にャァずいぶん楽しんじャッて
東京のバカ騒ぎどころじャない大バカ騒ぎで
さすがに本場は違うもんダと思ッたネ

それはそうと
さてさて、お祭り好きなもンだから
クリスマスが済むとすぐに正月飾りを出して玄関に飾り付け
もう何年も前から
12月26日以降は正月と決めてあッて
マーケットに出始めたおせち料理をちョびちョび買ッて来ては
もゥもゥもゥ
封を開けてちョびちョび切ッて
お皿に余白を多めにとッて
京風和風贅沢に
見栄えよく載せて
アレンジ完了




つまみ出す
仕事納めよりちャッかり早く
楽しいノなんノ
このちョびちョび
正月先取りしてこその
ひとりわがまゝ早始め
これぞ年末の醍醐味さ
大晦日ともなりャ
正月気分は
とッくのとうに一回戦
済んでしまッて
いる
いる
いる
1月1日を迎える頃にャ
毎年
次のパッケージの
おせちを開いているがナラワシ

バカにしちャァ悪いが
おせちの喰い初め
元旦から始めるなんてェもッたいない
悪しき形式主義ッてェもんさ
一週間も早めに喰い始めてこそ
伊達巻、きんとん、蒲鉾も
違う店のを食べ比べ
できて楽しい年末年始
数百円の違いが実際どれだけ味や食感の
差になッて出てくるか
けちッて買ッた安過ぎるのを喰ッた日にャ
味のそこ此処にチリチリチリチリ
添加物が染み込んでるのを舌に感じ
こりャあこれで年末の
ジャンク祭りと来たもんだッて
またまたハシャいじャったりするもんだ
ドイツのどこぞの医者の書いた
健康法の本によりャ
人間いつもヘルシーで無添加で自然なものばっかり喰ッてちャダメで
ときどき悪ゥいもの食べて
消化器官や細胞を慌てさえなきャいけないッてあッたナ
そうしないと細胞ども
怠けて安眠貪ッて
イザという時
対処できなくなるそうな

恒例おせちの早喰いのおかげで
もう27日には初夢も見ちゃッたッてもんサ
ゼッタイ正夢だと思う夢
のぞみ、ひかり、こだま…なんていう新幹線の列車名を
JRがぜんぶ廃止して新時代を担うべく一新
そんな発表が
新春早々賑々しくされる夢
夢を見ていながら
これッてまるで夢みたいだナなんて
ホッペタ抓ッていたッけナ
だッて
毎日始発から終電まで
いちいちの列車名をすべて別々の名前にし
何号なんていうのも廃止して
みんな女の子の名前にしちャうッてのサ
始発がカオリ、次ユキコ、ミヨコにリサにミワ、マイコ
外国名だッて豪勢に
サラにジェーンにカトリーヌ、
フランシーヌの場合もあれば、南都に雨降る日にはバルバラ、
大阪行きはイレーヌで
博多発ならミレーヌで
岡山止まりのジャクリーヌ
東京まではリンリンで
ランラン行くのは小倉まで
時には古風に卑弥呼だの
浮舟だのと
並ぶ並ぶ
夕方頃には夕子や霧子
夜には凛子もホーム入り
ジサマもバサマももう迷わない
のぞみ508号?…なんぞと
冷たい名前はもうなくて
美智子や幸子に乗ればいい
エリザベスはどこから出るの?
菜穂子はここでいいかしら?
ビクトリアの次の入線は百合子となッておりまする
まァァわたしと同じ名と
ちょッと喜ぶオバサマの
楽しい旅のお手伝い
世界に先駆け源氏名を
採用します
JR
人肌の旅
女の子の名前を揃えてお出迎え
乗る
乗る
乗る
乗る
女の子に
…ではなくッて
女の子の
名前の付いた最新鋭高速安全楽々列車に
乗る
乗る
乗る
乗る
乗らせる
乗せろ
乗らせろ
乗りたきゃ乗せてやる
JR
東日本だけじャなく
オール日本だ
初夢だ

 

 

 

行きましょー、わたつみ、shi、わたshi、

 

駿河昌樹

 

 

…気づくと、

(…“気”が、“気”づいた、のか…、

秋のからだをセンソォーのような香りが
戦争…、のよーな香りが
伸びていく

さとう三千魚さんから
複雑な潮騒の響き、轟きが
電線なんぞ伝って、の、(透明電線…?)、小さな、…便り、(shi、
空白shi?、…し、詩を…)

わたshi、…と呟きさえせず、舌先で、舌奥で、
言葉、声以前の、音のまろびを、転がりを、わたshi、
わたshi、と…

…また、遠いところに(…ゐるやうだ、
空白空ゐるやうだ、浦の苫屋が
空白空白空白空白空白あそこに見えてゐて…)

さとう三千魚さん、海の人、(間違いかしら…)
わたshi、数か月、海の匂いに
空白空包まれていなくて、…(ニンピニン、に、
その分、なったかしら、…なッちゃッた、かしら…)

空白(shi、
shi?、…し、詩を…)

わたつみ、shi、わたshi、
海、ゆかば、…

海、ゆかば、…わたshiは人魚に会いまする
トリトンに会いまする
鋼であれ、木材であれ、運ぶもの、それに頼って…
海、ゆかば、…

(あゝ街で心は逝ってしまう、逝心、逝人…、
(だからといって…、

…其処此処でshi、shi、shi、…わたshi、わた死、でも、
あったか、あったの、か、…今になってわかるとは、イハナイ、
ずっと死っていたこと、「裏切られてきたのさ…」、否、いいや、知って、
いたんだもの、裏も切られていないし、…表?
は!
は!

(…緑が足りない、そう思うんです、よく思う…。部屋には、緑、
(いっぱいにしてるんですが、たとえば、鞄、開けますね、あっ、
(緑が足りない、…よく思うんです。たとえば、時計、見ますね、あっ、
(緑が足りない、秒針も、分針も、時針も、茎でできていない、
(文字も葉でできていない…

海、ゆかば…

((((((潮騒だって、足りていないじゃないのサ…
((((((潮騒だって、足りていないじゃないのサ…
((((((潮騒だって、足りていないじゃないのサ…

わたshi、街の人、(間違いかしら…)

…叫んでも駄目なのさ、
空白空白空白空(駄目なのさ、、、、
空白空白空白空白空白[…面白いねぇ、馬、太、目、…、
うま、
た、
め、
うまため、うまため、うまため、…
どこが、駄目だってンだろ?
うまため、うまため、うまため、…
「叫んでもうまためなのさ、」って、
言っていた、だけだったのか… (なのさ、…)

菜の砂。

紋切り型のデートをしたかった、花村美世子さんと
菜の砂の
むこうまでずっと広がっている海辺で
ただ手を握っているだけで
手さえ握らず
ただ隣りあって歩いているだけでも
花村美世子さんと

花村美世子さん、菜の砂の人、(間違いかしら…)

))))))あゝ、鎌倉あたりでの能が、秋、足りていない…
))))))晩秋までに、初冬までの、ふしだらな能好みの女体を抱きたい…

欲望を淹れて
カップからはロシア戦役の湯気
わたshi、どんな肉に宿っているか、
わたshi、どんな思いに宿っているか、
わたshi、どんな耳と耳の間に(と、アイヌ人なら歌う…)宿っているか、
どうでもよい、
そんなこと…
わたshi、あなた、穴多、あ鉈、anata、an at a、…

それとも、穴他?…

わたshi、穴他、穴多でないこと、証明できる?

(…“気”が、“気”づいた、のか、…
(そうして、
(“気”が被った、
(わたshi、?、…

穴他、穴多でないこと、証明できる?…

波の音が絶えたことはない街
波の街
街が波から逃れることはできないであろう

街々

穴他、穴多でないこと、証明できる?…

海、ゆかば、…

わたつみ、shi、わたshi、

あそこに見えてゐる
浦の苫屋まで

行く
とにかくも
行く

わたつみ、shi、わたshi、

行きましょー
行きましょー
行きましょー

 

 

 

ゆあーん ゆよーん

 

駿河昌樹

 

 

いまの
政府になってから
黒い 旗が はためくを 見た。*1
なんだか気分は

ゆあーん ゆよーん *2
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん *3

坊やはよい子だ、ねんねしな。*4
ねんねんころりよ、おころりよ、*5

繁華街など行きながら
映画館の前行きながら
大ヒット中の題名やポスター次々眺めつつ

『この男幇間につき』
『ラストチンピラー』

むかしヒットした映画に題名が
似ているようで
ちょこっと違う
そんな映画が多いなァと思いながら

『市民はつらいヨ』
『ハッタリ!』
『もう勝手にしやがれ』
『おバカさん』

けれど、あゝ、何か、何か…変わつた *6

『安倍と共に去りぬ』
『アベス』
『戦争も平和』
『居酒屋あっきー』
『安倍川餅の味』

あゝどこかで見たような
あの頃見たような

『コリータ』
『落胆のあいまいな代償』
『コンスティチューションを射った男』
『知識人たちの沈黙』
『フクシマ・コネクション』
『悲しみよまたこんにちは』
『コクミンハ・カンカン』
『戯夢政権』
『市民キケーン』
『おかしな、おかしな、おかしな世界』
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ニッポン』
『俺たちにも明日はない』
『文化果つるところ』
『ネオリベラリズム・パラダイス』
『地獄に堕ちた与党ども』

などなどと
ポスターを見続ける
見続けて

たらたら
たらたら

歩んでいく
滅びのほうへ
こころとか
あれやこれやの
ほころびのほうへ

(幾時代かがありまして
(茶色い戦争ありました *7

ゆあーん ゆよーん
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

(記憶といふものが
(もうまるでない
(往来を歩きながら
(めまひがするやう *8

(亡びてしまつたのは
(ぼくらの心であつたらうか
(亡びてしまつたのは
(ぼくらの夢であつたらうか *9

ゆあーん ゆよーん
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

 

 

 


*1 中原中也「曇天」
*2 中原中也「サーカス」
*3 中原中也「サーカス」
*4 東京地方「眠らせ歌」。北原白秋編『日本伝承童謡集成』第一巻。
*5 同上。
*6 中原中也「暗い公園」
*7 中原中也「サーカス」
*8 中原中也「昏睡」
*9 中原中也「昏睡」。「僕」を「ぼくら」に変えて使用。

 

 

 

 

たとへ視るといふことが罰せられる季節がきても

(1)

 

[49の引用にのみ依って]

 

駿河昌樹

 

 

もはや祖国に正しい円のひとつもなく (2)
含蓄草がうつむき水を吸っていたとき
降ってくる、雪 (3)
あたたかい建築を切ってゆく (4)
(ここに、いないで…)  (5)

地球が悪い (6)

皮膚だけが燃え (7)
溶けゆくぼくたちは恥のようにつらい歴史 (8)
やつぎばやの現代だ。
まぢかの永遠がみだれる。 (9)
(戦後の現在も政治の言葉はあまり信じられない。 (10)

明けて行く、放たれて行く、押し上げて行く、
…刻々の境、
そこで一日の始まりを拒む者…
反復がわずかにあらたまって反復でなくなる者も…
しかし、拒んだ者もその間際には
広い反復を見てその中へ身をゆだね、
あらたまった者もこれきりに反復の絶えた静まりを内に抱えて… (11)

世界が崩れて流れているのか (12)
やい 屏風 (13)

火をへだてて呼びかける (14)

虐殺された山川草木の
ぎゃくさつされたさんせんそうもくの
精霊たちの
囁く声が聞こえてくる
道路ぎわに死体がみえる。ああ、夜になると
一人一人道路ぎわに立ちあがって、白い手をふる
虐殺された山川草木の
木蓮、ぎしぎし、泰山木
蛇籠に河童、猫じゃらし
木蓮、ぎしぎし、泰山木
精霊たちの
奥津城どころ
こんな神道は避けちまえ (15)

帆は風まかせ 私は私の手まかせ
遂に私自身にもかゝわりのない手をぶら下げて (16)
(どこまでもゆける気がした)
(だからまたとおくをまわってもどってくる) (17)

なかには、やさしい人もいて、 (18)

抱いてもよい
他人が歩いている (19)
傷のようなやさしさがひろがる (20)
まだしばらくはこの世界はうるおう。 (21)

もしや
あの
むごい思い出の
ほんの一頁分でも
まっ白に
ならないだろうか (22)

(なぜ戦争において、国家の本質が出てくるのか。
(国家は何よりも他の国家に対して存在するからだ。
(国家は、そのような対外的な面において、
(内部から見られるものとは異なる様相をあらわにする。 (23)

かなしい兵器が
かなしいときに役立つ (24)
のっぺらぼうのこの町の けじめは
霧がつけに来るのだ (25)
ちょうど涙のにじむ速度で (26)

ああ未来の国家 それだけのこと
そしてめのまえの一本の杉
不定の位置に立つときかれは没落する
この赤らみゆく樹木の無意味に対して (27)

男は考える
この私に何ができるか (28)

私は青空なのだ  (29)

わたしは言語をもてあそぶ者
また言語によって
再生される者 (30)

知らないうたをうたって
知らない死を死んでるってことが…  (31)

(デス・バイ・ハンギングは
(「首しめて殺す」とか「しばり首」とか言うところであろう。
(首しめて殺すならおさな子も分るが、コウシュケイでは分らない。
(返り点も仮名もない漢文の辞世を読めたのは
(日本人の何パアセントであろう。
(「首しめて殺す」とか「しばり首」では法の尊厳をきずつけるか。 (32)

のつぺりと
私をたいらにする影は
いつたい何です (33)

ほほえみ には ほほえみ (34)

たとへ視るといふことが罰せられる季節がきても
わたしたちは限りなく視たいと考へる
わたしたちは眼のある季節について
わたしたちの構想をふくらませる (35)
それから 決断はゆっくりと…  (36)

潮風が
懺悔しています (37)

かつてここにあった
いまは誰のものでもない
(…を生きるために)
夏のひかり
まばゆいばかりの空虚
超えがたいものを超え (38)
あやまちはあやまちとして (39)
ニャーニャーにミルクをやるのを忘れないでね さよなら (40)
ぼくは夢をみるんだ (41)
蘆の茂みの蛙よりもはげしく (42)
入りこむこと (43)
これから見るにちがいない幾つかの夢 (44)
旅になかったあらゆるものがもう一度
星の箒に掃かれつつ、 (45)
いまは死んだまま、 (46)
何度でも (47)
花にまで至る (48)
やわらかさにしたがって  (49)

 

 

(1)吉本隆明「眼のある季節」
(2)谷川雁「人間A」
(3)朝吹亮二「〈終焉と王国〉秋の都会の冷たい…」
(4) Ibid.
(5)吉田文憲「ここにいて」
(6)加藤郁乎「トランジスター氏の精霊」
(7)鮎川信夫「トルソについて」
(8)長田弘「八月のひかり」
(9)稲川方人「〈われらを生かしめる者はどこか〉(路傍よ)」
(10)川端康成「東京裁判判決の日」
(11)古井由吉「白い軒」。一部を断片的に引用。
(12)渋沢孝輔「偽証」
(13)堀口大学「屏風を叱る」
(14)吉岡実「タコ」
(15)吉増剛造「老詩人」
(16)高橋新吉「そのとき」
(17)新井豊美「庭」
(18)金子光晴「そろそろ近いおれの死に」
(19)佐々木幹郎「一千もの死」
(20)堀川正美「日本海六〇・飛島で」
(21)福間健二「まだしばらくは」
(22)川崎洋「まじない」
(23)柄谷行人「世界史の構造」第3部・第1章・3
(24)関根弘「水害風景」
(25)石原吉郎「霧と町」
(26)吉原幸子「月日」
(27)谷川雁「人間A」
(28)清水哲男「甘い声」
(29)鈴木志郎康「少女皮剥ぎ」
(30)吉岡実「夏の宴」
(31)北川透「ポーのラブソング」
(32)川端康成「東京裁判判決の日」
(33)尾形亀之助「十二月の路」
(34)川崎洋「ほほえみ」
(35)吉本隆明「眼のある季節」
(36)北村太郎「個体のごとく」
(37)吉行理恵「波の戯れ」
(38)新井豊美「庭」
(39)鮎川信夫「夏への挨拶」
(40)寺山修司「トマトケチャップ皇帝 6」
(41)田村隆一「未知くんへのメッセージ」
(42)窪田般彌「誕生」
(43)飯島耕一「見えるもの」
(44)北村太郎「五月闇」
(45)平出隆「冬の納戸」
(46)高貝弘也「共生」
(47)黒田三郎「紙風船」
(48)鈴木志郎康「部屋の中で その二」
(49)堀川正美「白の必要」

 

 

 

あなたがおばあちゃんでなかった頃

 

駿河昌樹

 

 

夜も更けて
ちゃぽちゃぽ
風呂に浸かっていて思い出したのは
めずらしくも
祖母のこと
母方の祖母のこと

ひとに話す時には祖母って言いなさい
おばあちゃんなんて言ってはいけません
タカピーだった母にはきつく言われ通しだったが
祖母と呼ぶにはふさわしからぬ
いつまで経っても田舎まるだしの
子どもの目にはでっかくて
塗り壁みたいで逸ノ城みたいなおばあちゃんだった
風呂に浸かっていて思い出したのは
どうしてだろう
おばあちゃんの家に行った時には
いつもいっしょにお風呂に入れられて
ちゃんと何十か数えて温まってから出ることになっていたからか
落ち着かない幼児には
けっこううんざりな
めんどくさい
がまんがまんのあったまりの時間
あれがよみがえったからか

何十か数えるといっても
東京の言い方ではない口調でおばあちゃんが数えるので
「いーちーに
「さーんし
「ごーろく
「しーちーはち
「きゅーじゅ…
とのんびりしたおばあちゃん節
ぼくはよくノボせてしまって
上がるとたいてい気持ち悪くなって
「まあ大変だ
「はやくお醤油を飲みなさい
「ちょっと舐めれば治るから
と母やおばさんたちから
ノボセの特効薬の醤油をちょこっと飲まされて
畳の上にぶっ倒れたり
椅子にだらっとなったり
後からおばあちゃんが出てくると
「まったく弱いンだからねえ
「おばあちゃんなんか
「天皇陛下の名前をぜんぶ言いながら温まったもんだ
「じんむすいぜいあんねいいーとくこうしょうこうあんこうれいこうげんかいかすーじんすいにんけいこうせいむちゅうあいおうじんにんとく…
とかなんとか
ぼくには記号とか暗号でしかない音をしばらく発しながら
「よっこらしょーのしょ
とかけ声かけて
重い鍋を食卓に移したりしはじめる

なにかと弱っちかったぼくは
食べるのも遅いし
すぐ疲れるし
ちょっと外出するとすぐに「タクシー乗ろう」となまいきに言い出すので
ニッポンじゅうが二十四時間働ける大人ばっかりだった時代
男の子の風上にも置けない情けない感じだったらしく
おばあちゃんにも言われっぱなしだったのは
「そんなんじゃ
「兵隊さんに取られたらすぐに死んじまうよ
「さっと食べてパーッと走っていけなきゃだめなんだよ
「乃木さんみたいにコップ一杯で歯磨き洗顔もできなきゃね
などなど
「そんなこと言ったってセンソーはもう昔のことだし
と反論すると
「センソーなんてまたいつ起こるかわからないんだよ
「赤紙が来て兵隊さんに取られっちまったら
「ぐずぐず食べてちゃだめなんだよ
「食べ終わらないうちに鉄砲担いで行かなきゃいけなくなるんだよ

またまた言われっぱなし

こんな幼時のことがあるから
おばあちゃんはやっぱり昔のひとで
センソー時代の考えのひとだと思い続け
学生時代が終わっても
おばあちゃんとはソノヘンのことは
話してもしょうがないだろうと思って
あらためて話をむけようともしないできたものの
ショーワテンノーの死んだ後
話がテンノーのことになったら
「まったくひどいセンソーを起こして
「あたしたちはさんざんな目に遭ったのに
「テンノーさんはのうのうと安泰だ
「食べ物もなかったし
「なんにもなかったし
「子どもたちは疎開にやって
「お父さんとあたしとおばあちゃんは
「空襲の火の中を右往左往してなんとか逃げて
「田端の家もぜんぶ燃えちゃって
「セメントのお風呂だけが燃え残って
「そこにお湯を入れて焼け跡の中で浸かったりした
「なにもかも燃えちゃったから
「田端から海の方までぜーんぶ見渡せた
「お父さんなんか馴染みの下町や隅田川のほうまで
「ずーっと歩いて見に行ってきて
「死んだ人が山になってるのをさんざん見てきて
「ひどいひどいひどいと言い続けてたけれど
「テンノーさんはのうのうと安泰だ
「あんなセンソー起こして
「平気で立派なところに居続けて安泰なんだ
と言い続けた
嘆くようにでもなく
吐き捨てるようにでもなく
つぶやくようにでもなく
まるで教科書に書いてある事実のように
ためらいもなく
つよく
はっきり言った
おばあちゃんは昔のひとでセンソー時代のひとだが
そういう昔とセンソー時代の鋭さを
ぼくは見直さないといけなかった
新鮮だった

晩年になるとおばあちゃん
だいぶボケが出てきたが
アタマのはっきりしている時もけっこうあって
ボケVSはっきり
ボケVSはっきり
が交互に点滅
そのせいでか発言も
ボケVSはっきり
ボケVSはっきり
かと思いきや
けっこう
はっきりはっきりはっきり
なりまさり
ちょっと家族が集まって話していて
なにか
世間の話題になっていた性的不祥事の話になった時
「だってしょうがないよ
「ニンゲン
「セックスはしなきゃいけないからねえ
「それは止めようがないからねえ
「抑えられないからねえ

はっきりはっきりはっきり
発言
これにはみんな一瞬黙り
このひと一体いつの世代のおひとか?と
一気に追い抜かれていく感覚
ひょっとして
タダモノではなかったかと
おばちゃんの顔をまじまじ見つめ
ぼくも思い直した

そんなこんなで
とうの昔に死んだおばあちゃんを
いまの時代に強引に結びつける気なんかさらさらないが
おばあちゃんは福島のひと
福島は四倉のひと
そこから見合い結婚で東京にひょこっと出てきて
姑相手の苦労も
つき合いのひろい遊び人の夫相手の苦労も
東京大空襲までのセンソーの苦労も
さんざん味わってきたひと
福島がまだフクシマでなかった頃の豊かさとゆとりを肥やしに
昭和の妻として
母として
大きな体で十全に生き切ったひと

「とにかく人間は勉強しないといけない
と言っていて
「大正生まれだのに
「おばあちゃんなんか
「女学校に行くのに毎日片道二時間歩いて通った
「毎日毎日往復四時間歩いて通った
「おばあちゃんなんかの勉強は大したことはないけれど
「それでも人間は勉強しなきゃいけない
「毎日毎日往復四時間歩いてでも
「勉強
「勉強
「女だって勉強しなきゃいけない
「これからの時代は女だって
「と思って
「毎日毎日往復四時間
「雨でも晴れでも暑い日でも
「毎日毎日往復四時間
「毎日毎日往復四時間

おばあちゃんのこんな言葉の記憶から
浮かび上がってくる
若い福島の女の子
女子高生の
歩く歩く歩く姿
「これからの時代は女だって
「これからの時代は女だって
と学校に通う姿
「毎日毎日往復八キロ
「毎日毎日往復八キロ
ぼくの目では
ほんとうは見たこともないこんな姿が
今になって
もっとも鮮烈に見え続ける
おばあちゃんの姿

夜も更けて
ちゃぽちゃぽ
風呂に浸かりながら
見たこともない
そんなおばあちゃんの
娘時代の姿に
ぼくは呼びかけてみる

毎日毎日往復八キロ
あなたが
おばあちゃんでなかった頃
歩いて通った
福島
おばあちゃん
いまのあなたには見えてますか?
おばあちゃん
どう見えてますか?

おばあちゃん
まだ歩きますか?
あなたなら
おばあちゃんでなかった頃なら
まだまだ歩き続けますか?
八キロでも
何キロでも
毎日毎日
毎日毎日

おばあちゃん…

 

 

 

おおおおおおおわたしは反省するぞ

 

駿河昌樹

 

 

ブルックナーをふと聴きたくなって

(たくさん演奏は持っているのだが、
(奥のCD書庫に行くのはちょっと面倒で
(手近にあるアーノンクールの箱に手を伸ばし

しかし
その前にメンデルスゾーンの『イタリア』を
なぜか聴きたくもなって
手近のブリュッヘンの演奏をとり

そこから遠くないところに見つかった
ブロムシュテット演奏の『ロマンティック』
ブルックナー第4番も手にとり

(これらが今の気分にいちばん合うものではないのは
(わかっているのだが
(手近さから
(面倒くささから

アーノンクールのブルックナーとあわせて
ステレオの前のテーブルに置き
アーノンクールから聴きはじめたが

(TELDECの2012年発売のこのボックスは
(ちょっと違うシャープなブルックナーが聴けて
(買った当座はずいぶん聴きこんだが

どうしたことかナ

今日はピンとこない
あんなに現代そのもののようにシャープな音だったのが
今日はヌルくなって聴こえる

つまらない
つまらない
つまらない

ので
ブロムシュテットに替える

買った当座はなかなか味わい深く感じたこれも
今日は鈍く感じ

つまらない
つまらない
つまらない

どうしたのかな
よかったんだけどな
DENONのこれ
こんなにつまらなかったかな

やめる

ブリュッヘンの『イタリア』
メンデルスゾーンに

ああ
これはいい
シャープな音
切れがいい
もたつかない

…シャープさを求めているのか?
演奏に
演奏にまで
つめたさと
シャープさと
ガラスと新建材でできた
新しい巨大なさびしさを湛えた高層ビルの
どこかの廊下やロビーでうっかりひとりになって
じ・ぶ・ん
などというものがすっかり透視され切って
(…切・っ・て
(…切・っ・て
しまっている時の感覚のような
演奏

響き
そして響きの切断を
求めて
いるのか?…

のか?…

ブリュッヘンの『イタリア』を
ぜんぶ
聴いてしまう

聴いてしまった

聴いてしまった

(アーノンクールも
(ブロムシュテットも
(ぜんぶ
(捨ててしまおうかナ…
(売るのではなく
(燃えるゴミの
(袋に入れて
(断罪
(してしまおうかな

ま、
べつの時には
べつの気分
(―生マレ変ワリノ機会ヲ与エヨ
(―蘇リノ
(―機会ヲ奪ウナ

(どんな演奏を集めても
(CDなど
(ようするにプラスチック
(君ハぷらすちっく相手ニ歓ビ
(落胆シ
(興奮シタリ
(オゾマシクモ文化シヨウトシタリ

ニーチェを最近忘れているんじゃないかキミ?

(ああ
(プラスチックな
(キミよ
(おプラスチックな
(おキミよ


バレンボイムが1994年にベルリンフィルをふった時の
ブルックナー第8番もこんなところにあるが

…かけてみる

ああ
つまらない
音の厚みはいいけどな
つまらない
つまらない
つまらない
こんなにつまらなかったかな

やめる

こんな時にちいさな生のむなしさが
おもむろに水位をあげて
ひたひた
ひたひた
ちゃぽん
ちゃぽん
足首まで
もう没して
こころの
足首
ひたひた
ちゃぽん
ちゃぽん
人生
ジンセイ
ジンセエ
なんて
どこにも
けっきょく向かわない
脳内3Dだったということが
わかっちゃうとねエ
(小津映画でも見て
(セルフ鎮魂
(セルフ鎮まり
(しますか…
(しますか…
(しますかァ…

ことばは鎮魂

あわれなアナタ
生きてる細胞の泥沼の戦場
あわれなアナタ
キレイゴト言ってもキレイゴト夢見ても動植物の殺戮者
新陳代謝
死滅し続ける細胞たち
巨大企業のように
あなたの体が解雇し続ける無数の細胞たち
期限つきで生き残って酷使される現細胞たち
アワレといわずしてなんと言おう
生の条件
生は差別と選別と見捨てと殺戮の無限連鎖

…と

最近
めったに聞かない
グレン・グールドのバッハ『ピアノ協奏曲集』
目に留まる
発見
CD書架のわきに入れっぱなしのままで
隠していたわけではないんだけれど

バッハのチェンバロ協奏曲
ピアノを使えばピアノ協奏曲
オーボエで演奏している人もいたりするが
ほんとうに大好きな曲集でネ
いっぱい
いっぱい
演奏
持ってる
あるよ

(ワタシ、コレクター
(では
(ないアルヨ
(あれこれ聴き集めてたら
(いっぱいに
(なっちゃった
(ダケ
(ダケ
(物欲でもないアルネ
(なりゆき
(ものの
(ハズミ
(我ガ人生の
(すべての
(ように
(…アーメン

グールドの演奏はネ
けっして最良とはいえない
コロンビア交響楽団をバックに
バーンスタインや
ゴルシュマンなんかとやったのが
SONYから出ているけれど
やっぱり
古楽器のチェンバロ奏者の名手たちが弾いたのには負けている
グールド節があまり通用しない曲なのか
あのバーンスタインらが
やっぱりグールドとは反りがあわないのか
とにかく
聴くんならグールドではないものを―
となってしまう
他の奏者のものを

グールド
かわいそ
グルード
かわいそ

だが
ひさしぶり
見つけちゃったから
かけてみる
聴かないで放っておくと
CDにも埃はつくし
黴ることもあるし
ときどき
使ってみる
いい
こと
アルヨ
モノ
物質の
アワレサ




(かけている



(かけてみている


よかったんだよ
グールド
これ

現代の録音技術から見れば
録音には切れがない
雑音がある
ところが
そんなものを超えた切れ味がある
なんだ
この切れ味は
バッハから来るものか

いや
いや
切れ味とかシャープさとか
そんなもの
どうでもいいんだと思わせられる
そんな演奏
けっこう手作り
手作り感満載
こちらの
価値観や消費者的要望を
切ってくる
ゴシゴシ
いつのまにか
こそぎ落としてくる
そんな
経験
ちょっと分厚い空気で包まれ直すような
経験

グールドだから
伝説だのあれこれのエピソードだの
そんなものもワッと蘇るから
そんなもののためかもしれないが
それでも
馬鹿正直に突き進んだ人の
(その人はもういないのに…
(その人はもういないけど…
熱が
ワッと来る
モコモコ
もこもこ
そこに
している
熱が
なのダヨ
熱が
もこもこ
もこもこ
うぉわーっと
ふぉわーっと
ふんぉわーっと
んぉわーっと

グールドの熱
グールドには熱があるのだよ
あったのだよ

その熱に
ひさしぶりに会ったよ

わたしは自分の求めていたものを反省した

会うべきものを誤っていたのではないか
たぶん他の間違いも犯しているのではないか
犯し続けているのではないか
わたしは反省しなければいけないのではないか

あれもこれも
いろいろと
たくさんのことを
自分の感覚も考えも価値観もだ

おおおおおおおわたしは反省するぞ

まだまだ大展開するぞ

しなきゃいけないのだ

今日の今のここまでのわたしはわたしにとって殻である
わたしは変わる
ついさっきまでグールドの熱を忘れていたではないか
そんなわたしはわたしにとって大切ななにかであるか
ノン
ノン
ノン
絶対にノンである
わたしは転回する
わたしはいま変わる
いまからさらに変わる
まだまだ変わらなければいけなかったのだ
くそくらえ年齢体調時代文化教養経験こびりついたわたし認識
わたしはいまから変わる
Beau ciel, vrai ciel, regarde-moi qui change!*
Beau ciel, vrai ciel, regarde-moi qui change!
(…美しい空、真の空、さあ見よ、わたしが変わるのを!)
(…美しい空、真の空、さあ見よ、わたしが変わるのを!)
ヴァレリーさん!
こんな意味で言ったのかあなたも
あなたの側に行こうなんて思っちゃいない
しかしこの文句は共有する
ヴァレリーさん!
Beau ciel, vrai ciel, regarde-moi qui change!
Beau ciel, vrai ciel, regarde-moi qui change!
(…美しい空、真の空、さあ見よ、わたしが変わるのを!)
(…美しい空、真の空、さあ見よ、わたしが変わるのを!)

さあ見よ、わたしが変わるのを!
あなたもだ!
今のままで安定飛行していこうなんてダメだ!
このまま楽なところへ降下して行こうなんてダメだ!
さあ見よ、あなたも変わる!
もう大人だから?
もう老いも来ようとしているから?
もう終末も遠くないから?
ノン!
ノン!
ノン!
墓碑銘にNONと記したセリーヌ!
ノン!
ノン!
ノン!
ここからが始まりだ!
美しい空!
真の空!
さあ見よ、わたしは変わる!
あなたは変わる!
彼は変わる!
彼女は変わる!
出発だ!
さあ見よ!
われらは変わる!
さあ見よ!
さあ!
さあ!
さあ!

 

 

*Paul Valéry : Le cimetière marin
ポール・ヴァレリー『海辺の墓地』

 

 

 

聖母水村はなこへの夕べの祈り 全24章

 

駿河昌樹

 

 

ろくがくのほていあおいにきすをしたことがあるかい
『聖母水村はなこへの夕べの祈り』8・15

 

 

水村はなことあなたをよびたいの
かわいてるの、ぼく
せめてはなまえの水のゆたかさ
せめてはあなたを水と名づけて
いきのびたいの、ぼく
たすけてよう、みずむらはなこ
よばせてよう、みずむらはなこ
水村はなことあなたをよびたいの
水村はなことあなたを
あなたを

 

きららくらら
きららくらら
きららくららくらら
くらら
くらら

くらら

 

水からうまれたくらら
ひたひたぬれて
髪ぬれて
背をつつつうとすべりおちる水滴
みていたのさ、ずうっと
なんてきみはくらら
たんてきみわく、らら
ゆうぐれです
ゆうぐれ
くらあく
くらあく
おいで、よる
くららまだまだ
ぬれくらら
ら、 ら

 

くららきみの
はだかきみの
みてるはなこ
あそこはなこ

 

くららの、
くららなおっぱい
みて、ぽよよんと
うまれたて
おみずぽたぽた
くちびるるるる
きて、みて、だいて、
ね、はなこ
ぽよよんと
はだこしよう
くららくららに
はだこしよう
おみずるおみず
くちびるるくち
るるくちくちくち
びるるる、るるる
るよよんと
ぱここしよう
らよよんと
みゅここしよう
みゅここ、みくぉくぉ
りゅくぉくぉ、きゅくぉくぉ
くらるるる
るるるこ
るここしよう
ね、はなこ

 

みているのね、はだかの
せなか
つかれて
ぬれたまま
かわきにびっしょり
ぬれたまま

ないているのね、じかんの
ほそい
かれくさ
もてあそんで
おわりだけをのぞんで
ふるえて

しんでいるのね、いちじく
むかず
まじわって
すすりすぎて
いるかのむれにとおく
はぐれて

まっているのね、みるくを
ふかく
きたえて
ころころと
あるでばらんにはなつ
ぬくもり
しっているのね、わたしの
くるみ
あかるみ
みずとつち
ふさふさとたちあがる
うちゅう

そんなふうなあなた
みている
どんなふうにあなたが
おぼえる
しんでいい、よ
わたし、あなた
いきかえってただいま
かげのなかにとつぜん
いいよ、あなた
わたしあなた
わたしゃなた
わたしゃーた

わたしゃーた

 

みずるみーよ
にきるにみーよ
ちょろにきえ
なはちょろみーよ

にはむさったらにーよ
りーよ
りょきゃんり
えいるみさらにーよ

るごっそっむーよ
れりれらるーよ
いよるがっさーにょ
にーよみりゃ
りーにょむりゃ

れいれいりょ
れいれいりゃ
れいれいりょ
れいれいりゃ

 

ひとりでみずを
てんにおちていってしまわないようにみずを
てんにおちていっていつも もどってこないものたちにしたいようにみずを  そう
あのはるのひのごごのしろつめくさ、みずを
いかないでほんとうにおねがいほんとうに、みずを
おさえていたの、みずを
りょうてひろげてむねをつけて、みずを

くらいあぶらのようなすいめんをすべっていったね、ほていあおい
つきのひかりさくさく
さいていたはなまくまく
あたしのうんめいって、これ?  ついに
わかったきがしたけどよるのくらいくらいみずのうえ

ほていあおいよりあおいうんめい
あたしをおきざりにしてかないでうんめい

ろくがつのほていあおいにきすをしたことがあるかい むかし
あわびしてたころくりかえしくりかえしみたゆめ
はかないのはいつもえいえんのほうよね とおい
てらにいくのね やまとうみのかなた
さらにかなた すべての
ものたちにようやくなみだするすべもおぼえて
しみこんでいくあたしあおいうんめい
みずにさしいるつきのひかりよりあおいあおいうんめい

みずをおさえていたあたしのあおいうんめいのおはなし、ろくがつ
けっこんしようよじだいさくごにじゅんすいにあいして
しろいどれすしろいこころうんめいはあおく
しろいかみさまのまえであさのばらのほおをおちるなみだ

やさしいくちづけをしてね、てのこうになんども
そのむかしあわびだったころひめていたゆめのように
そのむかしおんなだったころすてたゆめのように

 

さがせといわれてたびにでた
くろいばらのしみたわきばら
へめぐったかずかずのこうやよくや
ふいていただけのかぜ
ながれていただけのたいが

聖母水村はなこに全霊をもって帰依し奉る
くろいばらのしみたわきばら
やわらかなはだのからだへひとすじにわれを
みちびきたまえ、みちをしめしたまえ
くろいばら、やわらかなはだ、わきばらへ
あゝ、ふいていただけのかぜ
ながれていただけのたいが
へめぐったかずかずのこうやよくや
わきばらであるだけのわきばら
やわらかなだけのはだ

さがせといわれてたびにでた
くろいばらのしみたわきばら
もとめつづけくらくらのこころで
ひたすら祈り帰依する
聖母水村はなこに全霊をもって帰依し奉る

 

10

いきることはやはりしんわ
ぼくもきみもかれもかみで
そらをとべて
すがただってけせる
もうやめよう、にんげんのふり
もうやめよう、げんじつのふり

 

11

おがわのおもてがゆうひをあびて
いつかほんとうのじんせいがはじまる
かわのほとりでこんやくをするのよ
ひとしきりかわのみずおとはたかまれ

ひとりでいきていくじきのおわりは
ひとりでいるすべをしるとき
みずくさよりもうつくしいかみで
ひとりゆうぐれをしあげる

かなしさのなかをみずはながれる
よろこびはどこまでいくちからもつか
しっているかい、あいしたやまよはやしよ
みずをおもいでとしてしずまれよ、こころ

きょうもゆうぐれていくわたくし
むしのなくむらさきのかわべり
いつかほんとうのじんせいがはじまる
ひとりでいるすべをしるとき

 

12

しゃしんをとってなにになるの
とったひととられたひとはきえて
ただしゃしんだけがのこる

いつきてもこうげんのなつは
このはなとあのはなでいっぱい
なつごとなつごとのえいえん

あいしてよつよくいまだけ
あしたはかぜになるから
ながれながれていくから

ほんとうはわたしこわいの
しゃしんとってたくさん
わたしはいまだけのはななの

いつきてもこうげんのなつは
このはなとあのはなでいっぱい
わたしはいまだけのはななの

なつごとなつごとのえいえん
わたしにはかかわりはなくて
このはなとあのはなでいっぱい
このはなとあのはなでいっぱい

 

13

さいわいなるかな
よびかけるあいてあるもの
あなたのたましいのみじめさ
ありありみつめてもらえて

さいわいなるかな
みつめるあいてあるもの
あなたのまなざしのにごりを
ふかくかなしんでもらえて

さいわいなるかな
じさつしたともをもつもの
いきているというげんそう
すこしつよくもちえて

さいわいなるかな
すべてをあきらめたひと
うみやまをかわをそらを
やっとみるすべがわかる

 

14

こうふく、ふこう、こうふく
おなじことさというあなたのかたに、いま
てんのみつかいのようなあおすじあげは
とまろうとしてとまらず
きのこずえのたかみへ
きえていってしまって、おもいではかぜのように
こころからうずをまいてうきでる
てんのみつかいのあげは
こうふく、ふこう、こうふく
おなじことさとあなたいうから
にげていってしまって、おもいでもかぜのように
こころからうずをまいてきえさる
てんのみつかいのわたしも
こうふく、ふこう、こうふく
おなじことさとあなたいうから
とまろうとしてとまらず
さっていってしまって、おもいでもかぜのように
うずをまいてきえさる

 

15

くららくららとよびかける
ぼくのかたわらをしすべきひとびとのむれ
とおくではまたげんばくがおちたよ
とおくではまたさつりくがはじまる

にんげんやってあなたなんねん?
かんがえないわけにはいかないとおいひげき
ぼくだってずっとこのくにのほしゅうで
てかせくびかせあしかせのさいげつ

にんげんやってあなたなんねん?
どうせしぬんだからなんていうなよ
たたかいはとめなければならず
うみやまはまもらねばならない

くららくららとよびかける
ぼくのなんとちからなきおこない
にげてるわけじゃないんだ
わすれたわけじゃないんだ

にんげんやってあなたなんねん?
かんがえないわけにはいかないまもなくのひげき
けつだんはいつもことばなくなされる
くららくららとよびかけるあいだに

 

16

つかれ
すぎているのよ、たぶん
いのちのすばらしさ
くちがさけても
いえないなんて
あせ
うで、かたのおもさ
せすじのこわばり
めのおくがいたくて
うまくまとまらないかみのけ

いのちをさんびするのは
おかねもちのおくさんたち
おっとはだいきぎょう
むすこはけいえいこんさるたんと
いのちのすばらしさをせかいに
つたえなきゃつたえなきゃ
まあいろんなことはあるけど
じんせいはすばらしいものだわ、って

はんろんしないしあたし
なにもできないしあたし
つかれすぎているたぶん
とおいくににたくさんのしたい
あとからあとからばくだんみさいる
あたしがきょうかわなかったべんとう
もえるごみになっていくあかるいあした
しんでいくしんでいくかわれなかった
べんとうたべられなかったひさいちのこども

つかれすぎてるのあたし
たすけられなくてごめん
ごめんなさいごめんほんとに
たすけたかったのあなたを
こんなはずじゃなかった
つかれてなかったころは
おもっていたまいにち
あたしひとりでもやれると
みさいるばくだんなくして
たべものこうへいにわけて
おもっていたわかいひ
しんじていたじんるい

あたしつかれてふらふら
てれびつけてぼんやり
あなたのことみている
あなたひどくやせてて
あなたたつちからなくて
あなたおなかふくれて
しのまえのかおのきれいさ
めのなんとうつくしいこと

あなたがしんでしずかに
なおあけるあさきぼうと
よぶひとがいるそれを
つかれにがいこころで
ノーというわあたしは
ひていしてもひていしてもひていしても
たりない
ノーというわあたし
あなたをたすけられなくてあたし
みてるしかなかった
あなたからとおくはなれて
せまいせまいあたしのつかれのなかで
あたしのわびしいむりょくさみじめさのなかで
みてるしかなかった
ひていしてもひていしてもひていしても
たりない
じんるい
ノーというわあたし
ノーというわじんるい

 

17

かみをまちのぞむ
いっぽんのくさ
いちりんのはな
かぜふけば
ゆれ
あめふれば
ぬれ

すがたどうでもいいよ
こころどうでもいいよ
かぎりなく
かえっておいで
まっているのは
かみ
かえっておいで
うらぶれて
つかれきって
こころくちて

 

18

それでよい
あなたはそれでよい
あなたはそうであればよい
あなたはそうありつづければよい
あなたはそう
そうそうあれ、これからも
そうあれ、かぎりなく
そうあれ
そうあれ

 

19

ゆうべのいのり
かぐわしき
ゆめのはなばな
みなみのくにのあかるさ
きたのくにのしずけさ
どうぶつのこらとあそべよ
ながれにほしのちるまで

ちからのすてきなやさしさ
よるのかがやきをいっぱい
ひるのせいじゃくにだかれて
いかりのおちつきをたもつ
うみのちいささをくすぐり
ちせいのかるささわさわ
あついみるくのすがすがしさ

ゆうべのいのり
ゆめ、よろこび、やさしさ
やっぱりいきていこうよ
うつくしいものにひかれて
きよらかなもののほうへ
あんいけいはくふらふら
らふらふ、はひはひ、ひほひほ

ゆうべのいのり
ほしへのあいじょうはたりているか
うみへのれんあいはさめていないか
みるものきくものくらくくらく
いろづけるのうのあかをおとしなさい
おもうちから、おもいえがくちから
まだまだてつかずのむげんのうちゅう

 

20

みずからうまれたくらら
みずをはなれず
みずにもどり
またうまれ

くちつけるとき
くららのちぶさ
わきばら
せのふるえ
うなじすべらか
みみのこうこつ
はなのこりこり
ゆびさきつめたく
ふとももふとく
みどりなすちいさなもり
かげうつくしき
たにのするどさ

みず、くらら
聖母はなこの御使いくらら
からだひらいて
ひとびとを
うるおすくらら
みずくらら

もとめつづけてくらくらのこころよ
くららせよ
みずくらら
みずくららせよ
みずくらら

くらら
みずくらら

くらら

 

21

わたしのなかでひとり
わたしがさびしんでいるとき
聖母水村はなこさま
きてください、すくいに
わたしであることのでぐちのなさ
わたしであることのあじけのなさ
わたしはわたしのくらいぬまのよどみ
わたしはわたしのさびついたじょうまえ

わたしのなかへひとり
わたしがまよいいっていくとき
聖母水村はなこさま
きてください、すくいに
わたしであることのやるせなさ
わたしであることのほうとのなさ
わたしであることのいんうつなちかしつ
わたしはわたしのあんうつなゆうれい

わたしはわたしのこころなんかいらない
わたしはわたしのじんせいもいらない
どこまでいけばうんめいのはてにでるの
おわりなくかこいこまれいるこひつじ
しゃかいにかぎりなくまけていくわたし
ひびおもくくずおれていくわたし

わたしわたししいられてるわたし
わたしわたしけんおしてるわたし
いつのひか
わたしのいのちはてるとき
はっきりとつよく、つよく
わたしをだいてください
わたしがおわるそのとき
きてください、すくいに
わたしがわたしおえるそのとき
わたし、わたしあなたに
わたしわたす、あなたに
わたし、わたしわたして
わたし、わたしおえる
きてください、すくいに
だいて、つよく、つよく
わたしおわるそのとき
わたしわたすそのとき

 

22

くちていく
ねがいの
かるさ
ふわふわ
ぱらぱら
さわにふる
ゆきは
あわゆき
くもうすく
そらのあお
きれめにみえて
ただひとつ
つよきひかりの
ほしたかき
へいげんに
ふくかぜの
やわらかさ
おもいだす
はるのひの
とおいひの
おがわのおとの
せいれつな
おと
くれる
はるのひ
あのかわの
ほとりに
ひとり
きいていた
みずのおと
はっきりと
やわらかく
あたたかく
るるると
くるるると
まさしくくらら
かたちとる
いぜんのくらら
るるると
くらら
ると、くらら
えいえんに
くららなくらら
よろこびになく
くちていく
ねがいのはてに
なおくらら
るるるとくらら
なおくらら
なおくらら

 

23

いたりつき
たっせいし
へんしん
おわり
きゅうそく
はて
ついに
かたってもよい
ことばをかたってもよい
むくわれず
れいばいとして
くちよせとして
ことばをただうけてかきしるす
くぎょうしゃ、おまえ
かたってもよい
からだはひへいし
ひるによるをついで
じんせいかしぐままに
ぼうきゃくし
ぼうきゃくされ
あるくかげ
かきしるすししゃ
くぎょうしゃ、おまえ
なんのためとも
だれへむけてとも
すでにいわぬ
くぎょうしゃ、おまえ
ただかくだけのひと
しがそのてをとめ
そのめをつぶし
そのあたまをこうちょくさせる
そのときまで
ただかくひと、おまえ
かたってもよい
くぎょうの
へんしんの
このみちのり
だれにむけられてもおらず
なんのためでもない
ことばすることばのぎょう
そのくるしみを
そのよろこびを
かたってもよい
ここまできたからには
ここまできたからには

 

24

よるがふかまりかなしみは
そこしれない
かがやきをはっしはじめるから
やわらかく
しんでいこうよ、みんな
あかりを
うつくしくたいせつなことばの
かきしるされたほんにおしばなして
おいつのひかしんじゅの
ほおをもつしょうねんたち
みつけるめのはるのわかばかがやき
もえあがるほん
あかのぺーじもあおのぺーじも
みえないものへとかたちをとっていく
あつくうすくふるえる
がらすのまくがふるふる
まだみぬほしのかずかず
いっしゅんにすくわれて

やわらかく
しんでいこうよ、みんな
おわったやくめゆうぐれ
あたたかいよるはほしょうされて
いのられたことばひとつひとつ
たいせつに
もっともくらいちほうへとまかれて
ほしとなるじかん

 

 

 

 

希望と潤いの郵便局、  くく、く、、、、く、

駿河昌樹

 

 

また(みずから)風景となるために

位置を

ずらそうとするのか 草が

 

 

立ちあがってきている、遠い河…

でも

身をかわし、

逃げて、

 

宴のさなかの小平サン、

 

 

わずかひと茎を

より危険な圏域に傾がせるように

馥郁たる運転手の娘 の の

その肌より

流れ落ちようとして落ちずに垂れる

 

 

サンマ焼きはじめ…

酸漿ほどの大きさと

アカルミの

魂…

 

 

(みんな、そう言われちゃうのか…

(みんな、か…

 

 

七色の(光の加減で)変わる

虹鱒と玉虫の縁戚らしくもみえる中、途、半、端、な、

生、物、よ、

 

 

思い出を…大事にし過ぎる人だねェ…、

そんなこと、

言われたって…

まるでキャラメル箱みたいに、…

 

身をかわし、

逃げて、

 

 

婚礼だ!巌と軟体老婆の

また黄変した乾燥水と

ペン先でちくちく色づけられた

胎児の爪の甘皮のあたりに昇っていく丸い月との

 

 

トージョー、トージョー、と

聞こえもするがコージョー、コージョーかも

しれぬ ホージョー、ホージョーかも

しれぬ

谷もないのに

谷川サン、

とぽ、とぽ、とぽ、と、命の汁の垂れる音

とぽ、とぽ、

とぽ、…

 

 

また(みずから)風景となるために

位置を

流れ落ちようとして落ちずに垂れる

馥郁たる運転手の娘 の の

わずかひと茎を

 

柏原!

 

 

草が

 

 

ずらそうとするのか 草が

記憶されるためではないのに

(数あるうちの殊にその)半島に

朱色のペンキを塗りたくる流れ星が

ひよひよ

 

 

まるで洗濯頸椎のように

なめらかに岩川を進む 放逐の珊瑚 三島四島五島と

舐めまくって

 

 

都市生活者と目覚し時計界のカルテルが生温かいバナナを王の

透明膣にくっぴくっぴ くぴくぴ

舐めさせまくって(白髪のスマホめ、

(六界のどこに逃げた?

(うまい埃をさらに

 

 

耳に詰め込もうとして

 

 

敬礼してるでしョ?

誰にむかってか、まるで死後のように、黒ずんできた指震わせて、

(さみしいところだよねぇ、

(さみしいところだよねぇ、

(きしきし、音がするが、なぁんの音、あれ?

(きしきし、きしきし、…世界が

(ぜぇんぶ、

(きしきし、きしきし、…

 

 

暮れ方の大学の廊下のようで、ほの明かりが林のむこうに見える…

(…マタ、ヒトリデ、狂ッテイクヨウダ、

(ダアレモ、他ニハ生マレテサエイナイノニ…、

 

 

…河童!

 

 

でも

身をかわし、

逃げて、

 

 

…落ち着いてきたポトスの茎、くくく、く、、、、く、

 

わがまゝに、

春を鬻いで、股ぐらにドラえもん、

 

 

くくく、    く、

 

 

河童!

おゥとも、河童!

 

 

希望と潤いの郵便局に

表敬訪問しておいでよ、六月からさらさらと

冷蔵庫を溶かして手帳にくっつけていたんだから

もう出来た頃だよ、

 

 

また(みずから)風景となるために

位置を

ずらそうとするのか 草が

軟体老婆の

わずかひと茎を

股ぐらに

 

 

…白髪のスマホめ、

落ちずに垂れる

その肌より

流れ落ちようとして

より危険な圏域に傾がせるように 馥郁たる運転手の娘 の の

朱色のペンキを塗りたくる流れ星が

(うまい埃をさらに耳に詰め込もうとして

虹鱒と玉虫の縁戚

七色の(光の加減で)変わる

胎児の爪の甘皮らしくもみえる

ひよひよ

婚礼だ!巌と

また黄変した乾燥水と

ペン先でちくちく色づけられた

昇っていく丸い月

 

 

記憶されるためではないのに…

(数あるうちの殊にその)

半島に

舐めまくって

目覚し時計界の王の洗濯頸椎のように

 

 

なめらかに岩川を進む

放逐の珊瑚

 

 

三島

四島

五島と

生温かいバナナを

くっぴくっぴ

舐めさせまくって

 

 

(六界のどこに逃げた?

 

都市生活者とカルテルが

透明膣に くぴくぴ

 

(白髪のスマホめ、

 

 

(六界のどこに逃げた?

 

 

希望と潤いの郵便局、

 

 

くく、く、、、、く、

 

 

 

また(みずから)

位置を

ずらそうとするのか 草が

 

 

風景となるために   くく、く、、、、く、

 

 

 

くく、く、、、、く、

 

 

 

 

デカルトでしょ、やっぱり

駿河昌樹

 

 

うるさい理屈を避け
黒革の財布

とほとほ

流れる
側溝の音を聴きながら
地中海

頭の中だけ
唐揚げに沖漬け

風通しのいい店の
入口近く
日本酒なら豪快
焼酎なら小牧以外の
あれこれ

串揚げも
ちぢみもよくって
定店にしたい

これから

飛んできたのは
オッと
花こがね虫

愛欲も
遠く
なっちゃったね

ちょっと長く
歩いて帰る
とうに消えた畑の
あたり

夢が
エネルギーだった頃の
なごりの読書癖

酔ったねえ

静まり返った
鶏舎に
…デカルトでしょ

やっぱり