午後四時の森

 

芦田みゆき

 
 

ドクッ という音が
頭上に響き
ミドリは空高く見上げる

覆いかぶさる静寂
(木々のこすれる音…)
(葉の隙間の息づかい…)
(鳥…)
(鳥と虫の羽音…)

割れた太陽が
ミドリの頬に突き刺さる

足裏が冷たい

耳鳴り
血管をしめつける頭内の虫

ミドリは頭を抱えこみ
天空を仰ぐ
ドクン ドクン
脈音が大きくなっていく

その時
ミドリの眼は捕らえた
木肌から零れる
黒い果実の連なり
つややかな実の表皮

 
(羽音)

 
午後四時
森からミドリが駆けてくる
「おかえり」
ミドリは何かを叫んでいるが
ぼくに声はとどかない
あぁ ここには
乾上がった川が横たわっているのだ