石の息

2017.4.1.

 

芦田みゆき

 

 

4月の初め、石の彫刻家Iwaneさんの群馬県のアトリエを訪ねた。
自然をたくさん観たいという私の希望で、二人は車で近くの山へと向かった。
途中、無人の石切り場が見えてきた。
私たちは車を降り、そっと散策に出かけた。
草むらを掻き分け進んでいくと、川の音が聞こえてくる。
小さな川を越えると、切り出された石の山が見えてきた。
Iwaneさんはすべるように石のあいだを移動していく。
山の斜面に木が生えている。
石の土地にどうやって木は生えるのだろう?と覗き込むと、
石を抱きかかえるように木の根がしっかりと伸びていた。
あぁ、私たちは地球の表皮に立っているんだ。
そして石の彫刻とは、地球の一部分を切り出し、
エネルギーを移動させたり、刻んだりすることなのだと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビリジアンを探して

 

芦田みゆき

 
 

2017.1.29
深夜、目をつむると、見知らぬ光景が次々を現われ、あたしは息苦しくて眠れない。その光景は、闇から湧き上がり、強烈な光となって眼前に広がる。そして消滅し、また、新たな光景が湧き上がる。
街のあちこちは、今日訪れた場所にとてもよく似ているが、よく見ると何もかもが異なっていて、細部は欠落している。記憶を切り刻み、失われた部分を想像で編み上げた新しい街。そこで、ビリジアンは全体に宿る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビリジアンを探して 

 

芦田みゆき

 
 

2012.6.10.

 

「…ビリジアンが死んだ。ぼくにはわかる。
窓のほそい縁に太陽が反射して白く光った時、ぼくは理解した。ビリジアンは死んだのだ。水源からゆるゆると水が流れだすように、ひとすじの血がひろがり、床に小さな湖ができる。ビリジアンは、そこに横たわっている。いずれ発見されるだろう。川沿いの湿った室内。
ビリジアンはぼくを見ることができない。
ぼくはビリジアンを抱くことができない。
ビリジアンは捨てられた植木鉢のように、割れた陶器の皮フから内側があふれだしたまま、眠っている。
ねぇ、ビリジアン、ぼくにはそれが見えるんだ。」

 

14937899_1138587219593185_393277659_n

 

14962926_1138587552926485_944504210_n

 

14971936_1138588019593105_970820719_n

 

 

 

光の疵 遠方の赤

 

芦田みゆき

 

 

13384798_961758923942683_105520479_n

 

13401358_961759023942673_1382017731_n

 

大きな鳥が
ゆったりと
空を横切る
その時
あたしの片側の頬が青黒く染まる

鳥の翼は
鈍い金属のようにみえた

羽搏きが巻き起こした風は
いつまでも地表を揺らす

あたしはからだを起こして
前を向く
遠方の赤は
なにも変わっていない

追わなくては
走っても
走っても
けして近づくことのない

 

 

 

光の疵 White

 

芦田みゆき

 
 

ある朝
粉雪のように
白がはじまった
あちこちに降り積もっては消え
ひと粒が膨らんだりつぶれたり
よく見ると
あたしのカラダはまだらで
目をつむってもあけても
まったく同じ白が広がっているのだった
さぁ、出かけるよ
どこにでもついてくるがいい
晴れた日の白というのも
おつなものじゃないか

 

13184575_943129179138991_334840855_o

 

13170562_943129562472286_1608362434_o

 

13170737_943129802472262_57450466_o

 

13161124_943129922472250_1187980773_o

 

13148138_943130335805542_1372982663_o