天皇について

 

佐々木 眞

 
 

 

有史以前秋津嶋に舞い降りし天孫こそはア・プリオリに偉大、か
八隅しし吾大王の高照らす日の皇子らはいかに御座すや

「万世一系」などと気安く言うが最初期の天皇なんて誰も知らない
南北で2つに分かれし万世のいずれが正当いずれが異端
なにゆえに赤の他人に頭を垂れるその来歴も定かならぬに
「日本第一の大天狗」と「日本第一の大悪霊」をこの世に送りし鳥羽上皇

愛しけやしわご大王の御代のいやさかを年の初めに祈る歌人は
和歌短歌宮廷文化の精華とて今なお愛でる歌人もありしが
今もなお五七五七七が大王の治世を言祝ぎ下支えする
遠き世の部族の長の末裔と伝わる人に額ずく人々

「人の上に人を作らず」と諭吉言いしが天皇だけはその限りにあらず、か
年下の会ったこともない女の子を「佳子様」などと様付きで呼ぶ
なにゆえに苗字がないのか雅子紀子小雪やノンと同じじゃないか
「眞子様」と生まれながらに呼ばれる人と「眞眞」と呼び捨てられし我
九重にもヒエラルキーがあるようで横綱三役幕内幕下

空虚なる中心すなわち真空地帯 良家の子女の精神を乱す
政権がぶち壊そうとする憲法を天皇が守ってくれると勘違いした思想家
天皇は日本国の象徴にあらずして日本国民統合の象徴にもあらず
我が国の主権はあくまで民にあり天皇を奉戴するも拒むも

天皇と天皇制なき世の中の明るい空虚に堪えよ民草
この国に「象徴」などは要りません青空を行くひとひらの雲
平成の後にはきっとやって来るみんなに愛される素敵な皇室

 

 

 

「夢は第2の人生である」改め「夢は五臓の疲れである」 第69回

西暦2018年長月蝶人酔生夢死幾百夜

 

佐々木 眞

 
 

 

マガジンハウスの編集部で、サワダ選手が「今日はお世話になったのでなんか美味しいものでも食べましょうか」というた途端に、目の前の日程表がずり落ちたので、左隅の画鋲を刺しているうちに、誰もいなくなった。8/1

あわてて部屋を出ると、廊下の片隅でカタギリ社長が、哀しい顔をした女性の面談をやっていたので、「マガジンハウスもリストラで大変なんだなあ」、と思いながら、知り合いのライターと歩いて行くと、向うから「30億がどうのこうの」と言いながらやって来る男がいるので、よく見ると安倍蚤糞だった。8/2

おらっちが出演する2本のダンスショーは、長年にわたって人気を博してきたのだが、いつの間にか、不入りのお荷物プログラムになってきたので、その原因をよく考えてみると、肝心の私自身が、しばらく前から出演していないのだった。8/3

昔とった杵柄で、しぶしぶ広告制作に携わることになった私だったが、元電通のスギヤマ・コータロー選手から巧みにおだてられ、いつしかクリエイテイブ・ハイの高揚状態に突入していったのだった。8/3

猛烈な暑さの中、遠方から帰ってきた彼が杖を突くと、そこから清冽な水が迸り出た。8/4

うちらは、ギリギリまで海で泳いで、濡れた水着のまま駅に行って電車に乗り、みなでワイワイ騒いだので、乗客の顰蹙を買いながら、そのままの格好で帰宅した。8/5

もし火事になると困るので、私らは、その予防のために、5色のションベンを、家のあちこちに、ひっかけた。これで、もう大丈夫だ。8/6

ともかくどのお店でも「ナンバー17」が大人気。すぐに品薄になるので、クレームが殺到します。8/7

もりかけそば屋では、あんこの入った素麵が、飛ぶように売れているようだった。8/8

私設カジノが摘発され、ブルドーザーで完膚なきまでに破壊されたのに、いつのまにか復活して、怪しい賭博中毒者がよろよろしながら出入りしている。8/9

アフリカの女王となった理想主義者の姉は、統治するに際しても理想主義的な正しさを振りかざしていたので、現実派の私は「ネエさん、政治の世界では正しさだけでなく、強さを兼ね備えた正しさでないと無意味だよ」と警告したのだが、聞き入れてくれなかった。8/10

今日は、大学の法文ホールで、学館問題をどうするかについての、大討論会が開催されていたのだが、彼と彼女は、いつの間にか、消えてしまった。8/12

「この橋は、まもなく寿命が尽きることになっておる。ついては、お前たちが、まあそこそこの代わりの橋を、作り直せ」と、お代官様はわしらに命じられた。8/13

「善き牧者の朋」という組織にカンパしたところ、国家警察の忌避に触れたらしく、憲兵どもが自宅に赤紙を張って、外出できないようにされてしまった。8/14

その著名な写真家の作品は、少年期、青年期のみずみずしさ、壮年期の成熟、老年期の枯淡を経て、再び赤子のごとき純朴に回帰していた。8/15

スピロヘータに感染したせいか、私の販売企画は当たりに当たって、どんな階層をターゲットにした商品も無茶苦茶に売れるので、社長も口をあんぐり開けて驚いている。8/16

人気抜群のタロとシロの兄弟は、タロ&シロという有限会社を立ち上げ、郷里から末弟のサブローを呼び寄せ、3人トリオのコントとお笑いで、しばらくの間一世風靡した。8/17

暑苦しいので、真夜中に雨戸と窓をあけていたら、私は、網戸を持ったまま、2階から落下してしまったよ。8/18

暴れん坊は、大暴れしていたが、さしもの暴れん坊も、「お前の父母を捕まえた」と、ラウドスピーカーで伝えると、すぐに観念し、武器を捨て、両手を挙げて投降してきた。8/19

全国中学生ブラバン大会に出場する、地元のチームの連中が、なぜだか私の部屋に、全員潜りこんできたので、激しく戸惑っているわたくし。8/21

この海に突き出た小さな岬には、時々観光客が訪れるのだが、なかには、最先端の岸壁の岩陰に隠れて、夜を待つ恋人たちもいるので、彼らを見つけて、岬の外に連れ出すのが、私の仕事だった。8/22

また戦争が始まったので、三越のライオンや五輪の金銀銅のメダル、一本刀土俵入りの刀など、金目のものは、ことごとく供出を命じられている。8/23

奥の四畳半で休んでいると、青白い顔をした少女がやってきて、フラフラしているので、横抱きにしてやると、そのまま、ぐっすり眠り込んでしまった。8/24

ギリギリ国に入ると、多くのギリギリ人たちが、猛烈な頭痛と歯痛と咳に悩まされ、「もうもう堪りません。この頭を無くしてください!」と頼むので、私は大きな鉞で、バッタバッタと、ちょん切ってやったんだ。8/25

ギリギリ人たちは、今度の核戦争では、一瞬のうちに苦痛なしに焼き殺されることを熱望していたので、敵軍の原水爆投下推定地から遠ざかることを、いさぎよしとしなかった。8/25

地下観光ツアーAチームの案内役はマエダ嬢、Bチームのそれはアオキ嬢だったが、突如通信障害が起こって、双方との連絡が取れなくなったので、急遽私が、救助チームを編成して、真っ暗な地下道を手さぐりで降りていった。8/26

氏は、今年いっぱいまでの連載物の記事も、まだ依頼されていないその続編の一年間分の原稿も用意したまま、突如として身罷ったのであった。8/27

ルック社のMD担当は、いくら注意しても、去年と同じ色柄デザインを提案してくるので、伊瀬丹のバイヤーたちも呆れていたが、後に社長になった企画担当者は、「ふぁあちょんなんて毎回変えても、所詮同じようなものでさあね」、と澄まし顔で居直っていた。8/28

ジャック・ブレルの持つライカは、その時微かにブレたのだが、それが決定的瞬間を作り出すことになったのだ。8/30

私が持っているシャネルのドロップドレスは、ちょっと動いただけでずり落ちそうなので、腰から下に袴をはいて歩き始めたら、LaLaLandの連中が、私の周りでポンポコリンを踊り出した。8/31

 

 

 

黄浦江(こうほこう)

 

長田典子

 
 

ゆうるりゆったり曲がる
蛇行、
メアンダー、
いいなぁ
だこうって
いいなぁ
ねぇ、カコ、
はずんだ声で
オリエンタルパールタワーから黄浦江を見下ろす
銀行員だったカコは
パンフレットを片手に
あれが
ジンマオタワー、
ファイナンシャルタワー、と真剣に確かめている
案内のリーさんがケイタイをとり
メイファンの試験はうまくいきました、とエイ語で報告してくれた
彼女は黄浦江の対岸の大学院で難しい試験をひとつ終えたところ
だこう、ゆうるり曲がって まるまってメアンダー、
リーさんはメイファンのクラスメイト
来月からリーさんはアメリカに、メイファンはベルギーに
交換留学生で出かけてしまう
難しい試験を終えたメイファンの胸の晴れ間が
カコとわたしとリーさんを包み込む
ゆうるり まるまると
だこう、メアンダー、

きょうは
河沿いのワイタンを歩いてから
エレベーターで上昇し
ゆうるり、まるまると、螺旋階段を昇り
東方明珠電視塔、オリエンタルパールタワーの
地上351メートル
展望台にいる

ゆうべ泊まった五つ星ホテルのベッドで見た夢は
広い野球場のマウンドで
大勢の人に胴上げをされている夢だった
わぁーっ、と大きな声で寝言を言ったよ、
カコが長い髪をとかしながら教えてくれた

ああ、これが蛇行、メアンダー、と
橋の上から見下ろしたのは
ずっとずっと前 高1の夏
地理の授業で
蛇行すなわちメアンダー、と知って
部活の帰り
近くの河で写真を撮った
身体の奥深い場所で雷鳴が轟いた
旋回しながら落ちていった
ふかく ふかく
あれ以来
アラスカ、ミシシッピ、四万十、ハドソン、アマゾン、テムズ、
テレビや地図 旅先で 飛行機の窓から
蛇行する河を見かけるたびに
16歳の制服を着た少女になり 体内で遠雷が轟く
ときに写真に残した

巻き上がる
遠雷、蛇行、メアンダー
轟く
黄浦江の流れは
ゆうるりゆうるり90度に折れ曲がり
試験を終えて駆けつけた
メイファンと合流する
展望台の隅の土産物屋で翡翠を物色するわたしに
パールがいちばんいいね、とメイファンがニホン語で言う
耳には大粒のパールのピアス
きれい
東方明珠電視塔、オリエンタルパールタワー、
ニューヨーク、わたしはメイファンにニホン語を教えていた
マンハッタン、カコとは同じ語学学校だった

地上351メートルの透明ガラスの床の上
上海、
市街地の上空
カコ、
リーさん、
メイファン、
わたし、
それぞれに違う大きさ
違う靴の
片方を載せ
四葉のクローバーの形にする
写真を撮る

ウィチャットで送り合おうね
まるまると まあるく
蛇行した河から上昇する気流はやがて竜になる
空を旋回する
ゆうるり まあるく まるまると
カコ、
リーさん、
メイファン、
わたし、

 

※連作「不津倉(ふづくら)シリーズ」より

 

 

 

詩に会う

 

お粥を残した

義母は
今朝

うどの煮物も
残した

苺を食べた
無花果のゼリーも食べた

それから
蜂蜜をいれたヨーグルトを食べた

おばさん


言った

天をみて
おばさんと言った

山がのおばさん?

聞いたら
頷いた

おばさんがそこにいたのだろう

ヒトは

そこに行く
そこで待つ

 

 

 

ぼろぼろ

 

道 ケージ

 
 

それは花筏というには余りに
薄汚れていた

ゴキブリのように生きた
恨みは
思い出せない

突き合う度に
石に血が滴る

そう振り回すなよ
強く握ると刺さんねえぞ
こうやって
こう刺すんだよ
ホラ

で、中で抉る、なっ
痛ぇだろ

やってみな
おー、そうだ、そうだ

「あるべきにやあらむ」

空が青い
さらっと
川が流してくれらぁ

さいなら

 
 

* * * * *

 
 

生徒の必死さに
ぼろぼろの河原で
こんちくしょう
の花が咲く

徒然草百十五段
「宿河原といふところにて、ぼろぼろ多く集まりて・・・」
教室の果ての青空が痛い

高架の下に見つからないように
石碑が一つ立つ
卜部の兼好はなぜここに

第百十五段
話の内容は単純きわまりない。
「しら梵字」というぼろが師を「いろをし」というぼろに殺され、その恨みを果たすためにわざわざやってきている。いろをしは手下を抱えるいっぱしの悪僧。

「いろをしはおるか」
「オレだが。よう来たな。ああ覚えてる。そうか、ならやってやろうじゃないか。おめぇら手出しすんなよ」

「二人河原に出であひて、心行くばかりに貫きあひて、ともに死ににけり」と兼好はそっけない。次のように記す。
「ぼろぼろといふもの、昔はなかりけるにや。近き世に、ぼろんじ・梵字・漢字など云ひける者、その始めなりけるとかや。世を捨てたるに似て我執深く、仏道を願ふに似て闘諍を事とす。放逸・無慙の有様なれども、死を軽くして、少しもなづまざるかたのいさぎよく覚えて、人の語りしまゝに書き付け侍るなり」

「なづまざる」は少し気になる。
「暮れなづむ」で始まる曲もあったが、同郷の人のあの図々しさは自分を見るようで勘弁してほしい。「なづむ」は「泥む」と書いて、泥にとらわれて身動きがとれずに滞る様子から来ている。だから「なづまざるかた」とは「死にこだわらない」という意味。生の泥をすーと抜け出ることは、確かに「潔い」。

 

 

注)ぼろ・・・「非僧俗の無頼乞食の徒で、山野に放浪する類」(安良岡康作の註による)

 

 

 

詩に会いにいく

 

昨日
夜中に

目覚めた

それで本のある部屋にいき
机のうえの

いくつかの詩集をひらいた

詩集だからといって
そこに詩があると思ったら

いけない

場合によっては
なかったりもする

昨日は
長尾高弘さんの詩集をひらいた

あとは待つばかり

という詩があった
ヒトはなにを待つの

 

 

 

どこまで生くんだろう

 

yumboの鬼火がいいよ

荒井くんから
メールだった

ぼくも
石が降る

という曲はいいなと思った

いいね、
ことば以前に悲劇がある。

そうメールした

石が降る、って。詩だろう
馬鹿だろう
ことば以前って言うな。

そう返ってきた

ことば以前て
最高の褒め言葉なんだよ

 

 

 

家族の肖像~親子の対話その36

 

佐々木 眞

 
 

 

お母さん、素敵ってなに?
とてもいいことよ。
ステキ、ステキ、ステキ。

メレンゲ、お菓子でしょ?
そうだよ。

お父さん、小田急ちょっと揺れるでしょ?
そうねえ、ちょっと揺れるね。

自害って、死ぬこと?
そう。誰が自害したの?
武子が。八重の桜で。
そうか。大河ドラマね。

狭いと入れないでしょ?
そうだね。
お父さん、ふんづけちゃあだめでしょ?
だめだよ。

ほったらかしにしたら、お客さんおこるでしょ?
そりゃおこるね。

お父さん、台なしってなに?
めちゃくちゃにすることよ。

お母さん、ありふれたって、なに?
よくある、よ。

お母さん、両方って、なに?
こっちも、あっちも。

両は雨に似てるでしょ?
そうねえ、似てるねえ。

耕君、お盆休み終わったね。
ボク、明日からふきのとう舎とファミリーナ宮下行きますお。
そう、がんばってね。

お母さん、この際ってなに?
ちょうどいい機会、よ。

お母さん、魅力的ってなに?
ステキってこと。

お母さん、もう浮輪つぶして。
もう泳がないの?
泳ぎませんお。

ゴホゴホ。
お母さん、風邪大丈夫?
はい、ありがとう。

ゴホゴホ。
お父さん、風邪大丈夫?
ダイジョウブ。
お父さん、お母さん、二人とも早く良くなってね。
分かりましたあ。

ウオーキング、散歩でしょう?
そうだよ。

ガマの油は動物でしょ?
ガマは動物だよ。

ぼく、船頭さん好きですお。好きなんですよお。
そうなんだ。

お父さん、なんで石原さとみ泣いちゃったの?
さあ、どうしてかなあ。お父さん分かりません。

お父さん、正しい、の英語は?
ライトだよ。

お父さん、バカって言ったらダメでしょう?
そうだよ。誰かにバカって言われたの?
言われなかったよ。

お父さん、イライラしたらダメでしょう?
ダメだよ。

 

 

 

幸いなるかな

 

佐々木 眞

 
 

コウ君が笑うと、世界が輝く。
ケン君が笑うと、世界が揺れる。

私が笑うと、突然、世界が歪む。
そこで、ミエコさんが笑うと、世界が溶ける。

ああ、幸いなるかな、
まだ笑うことができる者たちよ。

幸いは、微笑みの中にある。
そのとき世界は、われらのものだ。