WE NEED THE GUITAR

 

神坏弥生

 
 

風が吹いている
鳥が鳴いている
右の掌を空に上げたなら
人差し指を立てて
指のアンテナで音波を掴む
僕たちが話しやすくするために
僕たちは、メロディを要する
我々に、ギターが必要だ
我々に、ギターが必要だ
我々が、ギターを弾いて
謳うように、話し
話すように謳い
時に黙るために、風が渡ってゆく
大地に、根を生やした樹々が
風によって枝を揺らし
木の葉たちの、しばしのざわめき
我々にギターが必要だ
我々にギターが必要だ
我々に音楽が必要だ
我々に音楽が必要だ
(願わくば、どうか我々に)LILICPOESYの星を

我々に歌が必要だ
まだまだ、まだまだギターが必要だ
まだまだ、まだまだ歌が必要だ
言葉をかき鳴らし、言葉をはじいて
大地を打ちつけるつもりでドラムを打ちながら
歩いてゆこう

言葉を空に放つつもりで、
空に映る初めの星の声を聴こうと
夜、夜空に、耳を傾けながら

Liycby yayoi kamituki

 

 

 

閃光

 

神坏弥生

 
 

閃光は外側からやって来る
照りつけた 昼間の日光
切り付けた ナイフの反射のように
暗い私の体の中へ
閃光がひらめき
体内から
どくどくと流れ
体の涙みたく
血液の海
君は死に切れないまま
君が捨てた
君を知る
友人が涙を流し
天がそれを許した時
雨が降るかもしれない
明日、天気になるといい

 

 

 

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ねむの、若くて切実な歌声

 

村岡由梨

 
 

このところ、娘のねむとの会話がぎこちない。
今、中学二年生。思春期真っ只中だ。

今日も、ねむは
教科書やノートがぎゅうぎゅうに入ったリュックを背負って
片道1kmの学校への道のりを
ただひたすら黙って歩いていく。

ある晩のこと。
ねむが、「明日学校で歌のテストがあるから」と言って
練習をした歌を、私に聴かせてくれた。
最初は、はにかみながら
途中吹っ切れたように、

ねむが、まっすぐ前を見据える。
歌声が、大きくなる。

みずみずしい音の果実を
一つ一つ確かめるように掴んで、もぎ取るみたいに
ひたむきで、透き通るような歌声

私はふと、
「眠」という名前をつける時に心の中で思い描いたような
しん と静かな森の奥の湖を思い出した。
深い孤独な青の湖にこだまする、若くて切実な歌声

ねむは、私のリクエストに応えて、
課題曲の他にも「君をのせて」や「カントリーロード」を
次々と歌ってくれた。

そばにいた夫が、
「大きくなったなあ」
と言ってメガネを外して、目を拭っていた。

私は、冗談で
「野々歩さん、結婚式では大泣きしちゃうかもね」
と言いそうになったけれど、
なぜか、言えなかった。

 

 

 

冬の水位 祈りとしての

 

長田典子

 
 

あなたたちの涙は
とつぜん
冬の水位として移動する
続く血脈をたどり
伝えよ、と
頭蓋に滴るので
悲しみが込みあげてしまうのだ
寒いでしょう…冷たいでしょう…
結露する窓枠
見る見えない津久井の山々
青く霞む稜線が
疾うに失われた地名へとみちびく
津久井町中野 字不津倉(あざふづくら)
湖底の墓地に今もまだ横たわる
置き去りにされなければならなかった
あなたたちのことを
伝えよ、と
冬の水位
滴るので
窓は ここで
永遠に結露する

 
 

※初出神奈川新聞の原稿を改稿

 

 

 

サバイブの微光に殺られる

 

萩原健次郎

 
 

 

わたしは、わたしの胃のなかにいるちいさな子と

ちろりちろりと会話をして

川沿いの道を、ひたすら登っていった。

それらは、知らぬ顔で、わたしを憎んでいた。

わたしは、脚を前へ前へ動かしていた。

歩みと言うのだろう。

朝は、毎朝のように、死にたい。

首を括って、無くなりたい。

わたしはもう、燃えている。

赤い肉は、焦げていき

胃の中の子を、道の面に投げだす。

貌を落として、わたしの貌と子が、遊んでいる。

光は、天に昇っていく。

光は、笑っている。

わたしを、笑ってはくれない。

薄く削がれた愛が、七輪の上の

金属の網であぶられている。

一抹の、生もまた、光に焼かれ笑われて

わたしの物体は、どこかから、大声で叫んでいる

さよならに、呼び返している。

わたしの身など、誰かにあげる。

微粒の生も、生きたいか。

泥水の中にいる、粒粒の遺恨も

臓の恋人も。

わたしの、微粒子。

やがて不要になる胃液。

胃の中の子。

陽は昇れ

海に沈め

ギャグを言え。

サバイブの微光に。