ベランダから見てた

 

たかはしけいすけ

 
 

それから
ぼくは

望遠鏡で
看板のメニューを確かめて
ランチにでかけた

日替わり定食を食べていると
うしろで
「詩人」とか
「絵本」とか
声がする

こんなところに
同業者がいるなんて
と振り返ると
さっきまで
打ち合わせをしていた二人だった

どの道で帰るのか
ずっとベランダから
見てたのに

見つけられなかった

また会えてうれしいよ

思いがけないと
なおさらね

 

 

 

なくしていたもの

 

たかはしけいすけ

 
 

さっき
同級生と
電話で話した

同窓会のお誘いだった

つい最近まで
同窓会で
ぼくは行方不明だった

剣道部でいっしょの
その人と話したのは
四十年振り

もはや知らないに等しいその人に
感じた親和性は何だろう?

なつかしく
あたたかい

なくしていた
なにか大切なものを
取り戻したような気がした

というのは
大きな勘違い

間違えないようにしよう

 

 

 

Spoons*

 

たかはしけいすけ

 

 

スプーンがなくなった
きのうも一本なくしている
床下に小人がいるに違いない
二本持っていったということは
楽器として使っているのだろう
きっとアイルランドから来たのだ

 
 

*アイルランド民謡で使われるスプーン二本で演奏する打楽器

 

 

 

真っ白

 

たかはしけいすけ

 

 

役者でもないのに
舞台で頭の中が真っ白になり
セリフが出てこない
なんて夢を
見たことがある

ある高名な詩人は
自分の詩集を開くと
ことごとく真っ白だった
なんて夢を
見たのだそうだ

詩を書いていて
書いても
書いても
真っ白
なんて夢は
まだ
見ていない

修業が足りんな

役者のほうが
向いていたかもしれない

夢の中のぼくは
舞台を動きまわり
真っ白な頭の中から
とにかく何か言葉をひねり出して
喋り続けた

そんな夢は
久しく見ていない

現では
詩が
書き出されもせず
真っ白のまま

 

 

*第二連 詩人=鈴木志郎康さん
空0浜風文庫に発表の詩「びっくり仰天、ありがとうっす。」のエピソード