かげ

 

Hitoha Nao

 
 

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空白空0家並みはいっせいに
空白空0火を噴く

空白空0終日 天を焦がして
空白空0焼きつくす

空白空0帰りを待ちわびて 子どもらが
空白空0銀行の石段に
空白空0たどり着く

空白空0母は すでに
空白空0かげに すぎない

空白空0扉は 開かれなかった

空白空0子どもらのおにぎりのためのお金は
空白空0運ばれることは

空白空0なかった

 

髪のながい女がひとり
ドームのまえの道を

川沿いに歩いている

甲高い声で
空に向かって 歌を歌う

愛を 平和を

誰からともなく起こった笑いは
小学生の一団に 広がっていく

祭りのように

秋空の下 楽しげに
繰り広げられる 平和の学習

天井を抜けたドームの
あばらの向こう

青空が突き抜けていく

ドームからは
ひん曲がった鉄骨が 数本

ぶら下がってはいても

かつて 焼けただれて
人々が流れた 元安川が
濃い水をたたえ

女のかげを
映している

 
https://m.youtube.com/watch?v=BrC3C68eOhM

🌠ピアニストのYoriko Hattoriさんとのコラボです❣️
ベートーベンピアノソナタ第2楽章第22楽章

 
 
 

八月のいちばん明るい日に

 

Hitoha Nao

 
 

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ふとんを抱き上げ えいっと
背伸びして 物干しに
投げかけた

ふとんの上で
おひさまが輝いて
わたしは一瞬 目が眩み

それから

ひなたの匂いに
ふとんが萌えだすことを
おもった

その日 おなかのなかで
おひさまの栓は 抜けた

重いふとんを
持ちあげたからか

あなたが ぽんと
内側から蹴って

出てくる合図を
送ったからか

おひさまの水は
溢れだし 溢れだし

わたしのおなかは 痛んで

草いきれのぼる 真昼
積乱雲の下

あなたは 呼吸した

空白空白空窓のない暗い箱のなかで
空白空白空今 息苦しく
空白空白空出口をさがす あなた

空白空白空八月のいちばん明るい日に
空白空白空生まれた人よ

空白空白空あの日のように
空白空白空蹴ってみてよ

空白空白空渾身の力で
空白空白空生まれてきてよ

空白空白空そして

空白空白空どうか ひとつ
空白空白空また明日
空白空白空ひとつ と

空白空白空花を つけて

 

🌠ピアニストのYoriko Hattoriさんとのコラボです❣️
https://m.youtube.com/watch?v=24_deFn4eXg

 
 
 

デルタの町

 

Hitoha Nao

 
 

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デルタの町の
川沿いを

わたしたちは
自転車で走った

今朝は
本読みながら自転車こいで
行き過ぎたの って

講義に遅れた
たわいのない友のはなしに

笑いころげた
夾竹桃の
咲く
あの道

あれから
わたしたちは
別々の川を行った

わたしの川には

夏が終わると
光るすすきが
あたらしい季節に向かって
旅立ったが

友の川には
いつも

夏のアザミが
繁っていたらしい

夫とともに住んだ
ラテンアメリカの国では

言葉に不自由な
孤独な生活であったと聞いた

帰国して
穏やかな日々であろうか

あの川沿いには

今も あの
あかい夾竹桃は
笑っているだろうか

 

2016年7月
ピアニストのYoriko Hattoriさんとのコラボ作品です。
https://m.youtube.com/watch?v=Y7ZmCzYs5HA

 

 

 

月を追って

 

Hitoha Nao

 
 

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見えない月を追って
わたしは 走る

夜の川辺の 草原を

空白空どこまで駆けた

空白空草が脚をうつ
空白空どこまで駆けた

空白空風が頬をうつ

気づけば

草の葉が
照らされるように
浮かびあがっていた

新月の輪郭が
わたしの足もとを

照らしているのだ
 
空白空白空白空白空白空白空白空白空白2016年6月

 

☪️新月とは、月と太陽が重なった時に起こる。夜空には月が出ていないが、月は見えないだけで、太陽と平行に移動している。新月は新しいことを始めるのに最適とされ、これから満月に向かうというエネルギーを受けて、「新月の願いごと」が注目されている。

 

 

 

小舟

 

Hitoha Nao

 
 

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なにも変わることがなかった日にも

風がやって来て
さざ波と
ちいさな光が
水面で遊んだ

雲がでて
光は翳り
それから また

風が来た

すこしだけ
わたしは揺れて

なにも変わらないと思った

空空空0子供らの声がする
空空空0すぐそばで
空空空0石投げをしているらしい

さざ波が
わたしを揺らした
光は

水面から
わたしの中に
風を運んだ

すこしだけ
わたしは揺れて
それから

ロープを切った

 

 

 

おやすみ

 

Hitoha Nao

 

 

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空を のこして
陽が沈む

鳥が ちいさく
声をのこして

魚が ちゃぽん
水音のこして

飛行機雲が
光 のこして

わたしは かすかな
失意 のこして

猫は くるくる
しっぽをまるめて

みいんな
ちょっぴり 心をのこし

布団にくるまり
ねむるんだ