イブニングスポーツに耳をふさいで

 

塔島ひろみ

 
 

私と日馬富士は 遊園地でコーヒーカップに乗ってまわった
楽しそうな二人の写真を私は見ている
そのあとベンチでソフトクリームを食べたのだ
まるでその辺のカップルのように
私はバニラ 日馬富士はなんと キャラメルダブルミックスだ

また別の日 私たちは坂道を黙ってのぼった
リードを引きずった犬がついてきた
日馬富士はその犬を抱きかかえ そして
思いっきり 坂の下の方に投げ落とした
ドサッという音を私は聞く 犬の鳴き声は聞こえない
日馬富士は優しかった 坂をのぼりつめ
この町やその町の つまらないあれこれが
一枚の美しい絵になって 私たちの眼下にある
ずっと向こうには、金色に 富士山が光る
ガードレールにお腹をくっつけて
私たちは立って長いこと富士山を見ていた
私には日馬富士が必要で
日馬富士に必要なのはモンゴルの高原だけど
日馬富士は黙って 富士山を見ていた

前の患者が長引き テレビではスポーツニュースが始まった
私は耳に指を突っ込み、目をつぶって時間をやり過ごす
こんなところで聞きたくはなかったのだ

江橋歯科医院の待合室
大相撲の結果は終わった
私は太股を掻きながら
日馬富士を待っている

 

(2017.7.11 江橋歯科医院待合室で)

 

 

 

おくらバッシング

 

塔島ひろみ

 
 

お腹におくらが入っている
おくらが少しはみ出している
そこをツンとつついてみる
なでてみる
引っ張ると痛い
私はお腹におくらを入れて
仰向けに寝た
おくらと一緒に 夜空を泳ぐ錦鯉を見た
岩本医師が登場
おくらに優しく話しかけ、なだめている
おくらは泣いていた

糸が抜かれ
もうおくらは 私のお腹の牢獄から
抜け出すことは不可能だ
3ヶ月そこにいて
そのあとおくらは私の皮膚になる
そして私はおくらになる

触ってごらんよ

 
 

(2017・7・21(金)医科歯科大皮膚科待合室で)