残雪 投稿日時: 2024年2月19日 投稿者: michio sato 返信 原田淳子 春が歩いてきて 落ちていたことばを拾った まだ残る雪は 雲の国土のよう 何人にも侵されない白 香が抜けた透明な花弁に似た水 雨が雪を溶かすのか あの子の肩に降る雨をだれが止めるのか 奪われた野にも春が来るのか
梅待ち 投稿日時: 2024年1月19日 投稿者: michio sato 返信 原田淳子 もうみない夢を待つ かなしみを繙く 言葉は初雪にとけた 音のない泡が生まれて消えて あれを時というの 正しい襟裳のような花弁 白く、淡く、直立す 天を指す花は 実をつけない 邪悪さとひきかえに 孤独が遺される 咳の震え 骨の疼き 痛みは胴体をめぐる旅人 身体のなかの島々 横たわる身体は黄昏れ、 洞窟は永遠の空を映す 目を閉じて、春
微睡 投稿日時: 2023年12月19日 投稿者: michio sato 返信 原田淳子 陽が差す午後に おひる寝をした 小春日和の 日曜日の午後 木の葉をうかべて 揺らぐ遠い湖 とりこぼされた光を眺めながら 道は流された 冬は窓のむこう きみが尻尾をふったら 12月の背中がみえた 手か足か 夢かもわからないうちに 時は扉を決定してゆく ぼくはまだ オリオンをみていない
葉跡 投稿日時: 2023年11月21日 投稿者: michio sato 返信 原田淳子 木陰に 迷子になったぼくのこころが光っていた あどけない色をして 知らないこどものように 雲が船になったと、 風の便りが届いた 捻れて萎んだ朝顔は 青い螺旋 空へ還る階段 冬がくるまえに おやすみなさい ぼくも こころのきみと船にのるまで 太陽をうたい 月を枕に 葉のしたで揺れていよう
秋鱗 投稿日時: 2023年10月19日 投稿者: michio sato 返信 原田淳子 空の鱗、 風に反射して、ひらひら 秋が剥けて 雲が千切れる 金木犀の小片 銀杏の小波 歩くたびに秋が降ってくる 燃え尽きた灰のわたしに 色の服を 薫る食を 与えるように 秋が、空から剥けてゆく 茜にむかって 剥けてゆく
ティン カン トン 投稿日時: 2023年9月20日 投稿者: michio sato 返信 原田淳子 ティン カン トン 根っ子の 奥の きみの 響きさ ティン カン トン ひかりの 泉の ぼくの 寝ぐらさ ティン カン トン ここに 来て ここに 来ないで 白い 太陽が ぼくらを 灼く 雨の ハンモック 逆さまの 虹 ぼくらは 子のない 無口な 家族さ
drive my father’s car 投稿日時: 2023年8月21日 投稿者: michio sato 返信 原田淳子 灼けつく壁に垂れ下がり 息を凝らしている 夏は無かった ただ白百合が揺れていた 漂白された運動靴 葡萄棚の海 カー・ステレオから ポール・モーリア「涙のトッカータ」 昨夜読み耽った マッカラーズのワンシーンが繰り返される 木、石、雲に宿る愛の科学 無かったのではなく 散っているのだ、四方の光に 未来も過去もなく 凪を潜りぬけてゆく 窓に映る 青い影のほおずき 秋に朱に燃ゆる わたしのこころ いつか この凪の季節を 優しく想い出すときが来るだろう
満天 投稿日時: 2023年7月19日 投稿者: michio sato 返信 原田淳子 かなかなの鳴く宵には いのちのかけらが降ってくる 月のない夜に 羽根を埋める 葉の指さすあの西の明星をごらん あれは 死んだ者たちがもたらしてくれる未来 いのちあるぼくたちにおくってくれる暁の光 『詩の国に住むことにきめた』 夢のつづきを描くのだって、 微笑んだ彼はそこにいるのだろう きみもともにゆこう 新しい朝が生まれるところ ぼくたちはそこで花のようにとべるだろう
夕凪 投稿日時: 2023年6月19日 投稿者: michio sato 返信 原田淳子 雨のあと 風の振り子がとまる 葉脈を雫が伝う 記憶の回路に迷い込む もうすこし 夕凪 あのこが泣き止むまで もうすこし あのこが葉を渡るまで
泉 投稿日時: 2023年5月19日 投稿者: michio sato 返信 原田淳子 きみの体温 ぼくの体温 ことばが生まれるまえに きょうも生きている 春風は 水を青くした 葉が歌うように 五月にきえた歌人のように 春の水を祖国と呼ぼう きみの朝の泉を