白蟹さん

 

原田淳子

 
 

 

白い浜辺に白蟹さん

波にさらわれないように
砂にまぎれて
触れば糸切りはさみ
足あと探すのもたいへんね

白蟹さん

わたし
砂のむこうからきたのよ
日出づる黄金のくに
まちはシャンデリア
硬貨は星よりまぶしくて
涙で流れる砂の城

百億分の一の海

百にち一千秒
砂のじこくは永遠のじこく
果てなき砂にくるまり
白蟹さん

わたしは
一秒の砂

 

 

 

離ればなれに

 

原田淳子

 
 

 

Bande à part

青が煽るたそがれ
ふつふつ胸騒ぐ

クロワッサンの横顔
レジスタンスのカフェ・オ・レ
革命のブラックコーヒー

わたしの手足は闇いろの棘
冬の木枯らしにきれぎれに
剥きだされた苦い肌

わたしの海は銀の砦
飛沫をあげて
哭いているのは人魚ではなくて

Bande à part

ここはつめたくて
カフェオレも醒めてしまう

一千一秒の朝
幾億の夜
ミルクは溢れて

離ればなれでいることで
その惑星が光るなら
きっとそれがいいのだと
わたしに囁く銀の糸

降らすは銀の雨

青、煽る

哭いているのは

哭いているのは

 

 

 

生まれたての背骨よ

 

原田淳子

 
 

 

まえぶれもなく
あたらしい月は廻り
はつゆめもみないまま
眼に星は宿る

あかつきは白と黒を燃やし
水は蘇る

月の羽根はないか
破れた靴に泣いてはないか

にぎやかな岬のふりをする
寂しすぎる谷
いつでも新しい湖のこだま

疾走する船に乱れ髪
唇噛んで

河の果てはないか
凍れる指に泣いてはないか

生まれたての背骨よ
砕けた星に誓え