音の羽 @140307

萩原健次郎

 

 

撮影:萩原健次郎

 

杭打ち、打ち、また打ち、
文字を描いた、人、指で傷をつけた人
それを、鑿で削った人、
言葉に、霊ら魂やらを添わした人
それらが、減り込む。
減算、なにかを知らせるための熱の減産。

老いていくことが、身の芯から抜かれて
わたしにも、軸があるのに、そのあわわの
そのあわわの、なにか、の、の、
から埋められる。

顔色を引かれ、
赤く腫れた、器物が引かれ、
笹が、引かれ
縄が引かれ、
鳥居が引かれ、
神のような、棚の上にあるものも
間引かれて、

空だけになった、赤ちゃんが泣いている。

青空の赤ちゃん。

タレに浸して、杭打ち。

おとわ、か。

昔、高貴であった、紀念の詳細も、
杭打ち、
地誌の暴きは、糊付け。

割烹着を着た、おとなしい人が
「紀念の、写真を、撮りましょうね」
と言って、そこに消えた。

まるい穴の中に、消去された。
まるで、シー・ジーだ。

大根のように、

まるまるの、正円の蕪のように
地面が、ただ、純白に、地底まで抜けている。

石の書の下まで、掘っていく。
すると
水だけがあふれて、
轟々と吹き上がり

文字の書かれていない、石の顏だけがあらわれた。

なあんにも、
埋まっていない。

(連作のうち)