「はなとゆめ」05 凍結

 

 

羈鳥恋旧林
池魚思故淵

 

 

虫の声が地上を埋めてます
虫たちの声が地上を埋めてます

太ってしまった
姉は太ってしまった

やせっぽちだった姉は太ってしまった
あんなにやせっぽちだったわたしの姉は太ってしまった

姉は母のベットの横の蒲団に休んでいます

あんなにやせっぽちだった姉が太ってしまったわたしの姉が
母のベットの横の蒲団に休んでいます

姉のあとを小走りに追ったのでした
子どものわたしは小走りに追ったのでした

ベットから母は

白い朝顔の花のようにわたしを見上げて
ゆったりと咲いた朝顔の花のように静かにわたしを見上げて

そして笑いました
動かない顔を歪めて笑いました

虫の声が

地上を埋めてます
虫たちの声が地上を埋めてます

姉のあとを小走りに追ったのでした
子どものわたしは小走りに追ったのでした

ポッ ポッ ポッ ポッと

モニタリングの定期的な音が聴こえています
血中酸素濃度と脈拍数は常に計測されています

そして笑いました
動かない顔を歪めて笑いました

雲ばかり見上げている子どものだったわたしを
母は見上げて

そして笑いました
そして笑いました

小鳥たちが鳴いています
もう地上には小鳥たちが鳴いています

 

 

 
※この作品は以前「句楽詩区」で発表した作品の改訂版です。