ぐあんばれ、くまモン

 

佐々木 眞

 

 

連日連夜の大震災でショックを受けたくまモンが、エコノミークラス症候群になってクマっているというので、仲良しの鉄腕アトムが駆けつけました。

「くまモン、そがん青か顔してどがんかしたと?」*1

くまモンは、鉄腕アトムが慣れない熊本弁を使ってくれたことに感激しながら
「どがんもこがんも、朝から晩まで余震が続いて眠れんけん、どがんしようもなかと」

と、よわよわしい声で答えました。*2

「くまモン、いま困っていることはなに? なにか欲しいものある?」
「ぼくのエコノミークラス症候群は、だいぶ良うなった。ばってん、ともかく余震が怖か。

一日も早よおさまってほしか」*3

「わかった。帰ったらお茶の水博士と相談してみるよ。でもあんまり期待しないでね」

「そらよかばい。よろしく頼んだもん」*4
「で、いますぐ欲しいものはなに?」
「えーと、えーと、水、下着、紙おむつ、それと生理用品があったらうれしかね」
「わかった。大至急持ってくる」

くまモンとかたく指切りゲンマンした鉄腕アトムは、たちまち大空高く飛び去りました。
「気をつけていってはいよ!」*5

その翌日、くまモンが市の避難センターでラジオ体操をしていると、バリバリバリと物凄い音がして、運動場に巨大な人型ロボットが舞い降りてきました。
見れば、鉄人28号ではありませんか!

鉄人28号の胸の扉がゆっくり開くと、その中から両手にいっぱいのお土産を持った鉄腕アトムと、ドラえもんと、のび太と、しずかちゃんと、なんとなんと六つ子が現われました。

くまモンは「びっくりモン」とうなったきり、目を白黒させています。

鉄腕アトムは、
「遅くなったね、くまモン。ぼくのお友達のみんなも連れて来たよ。ぼくと金田正太郎君と鉄人28号は、壊れたおうちやお城を直して、怪我したひとたちをどんどん助けるぞ!」
と叫ぶやいなや、アッというまに鉄人28号と熊本城めがけて飛んで行きました。

「はじめまして、くまモン。ぼく、ドラえもん。こちらはのび太君としずかちゃん。毎日テレビを見ていて大変なことになっったなあ。どうしよう。なにかできることがないかなあ、と思っていたんだけど、アトム君が一緒に熊本行こう!というもんだから、やってきたモン」

くまモンは、ドラえもんとがっつり握手をしながら、
「はじめましてだモーン。うれしか、うれしか!」
と喜びの声をあげました。

すると、そんな2人を六つ子がワワッと取り囲んだので、あたりは急に騒がしくなりました。

おそ松「はい、くまモン。これが天然水の入ったボトルだよ。いっぱいあるよ」
くまモン「ありがトマトー!」
一松「エコノミークラス症候群には、やぱり水がいいってさ」
十四松「それと、せっせと足を動かさなきゃだめだって」
トド松「はい、これが下着だよ。GUなんだけど、いいよね」
カラ松「ついでに、ぼくの大好きなお肉も持って来たよ」
チョロ松「こっちは、ハーバード大学特製の紙おむつだよ」
しずか「ほら、お待ちかねのナプキン類よ」
のび太「さあ、これからぼくたちは、熊本復興のボランティアとしてがんがん働くぞ!」

すると、くまモンは、
「シャキーン! ワオー、くまモン、サプライズ! うれしか、うれしか! みんな、ありがとう。ぼくも今日から百万馬力でぐあんばるぞお!」
と叫びながら元気よく飛びあがり、みんなと一緒に「くまモンもん」の歌を高らかにうたったのでした。

 

 


*1「くまモン、朝っぱらから顔色が悪いぞ。どうしたんだい」
*2「どうもこうも、朝から晩まで余震が続いて眠れないからどうしようもないんだよ」
*3「ぼくのエコノミークラス症候群はだいぶ良くなったけれど、ともかく余震が怖い。一日も早くおさまってほしいんだ」
*4「それはいいね。よろしくお願いします」
*5「気をつけて行ってきてね!」

お断り この詩の熊本弁は、熊本出身の友人、田中聖一さんの協力と助言のもとに佐々木が作成いたしました。田中さんのご協力に厚くお礼申しあげます。