家族の肖像~「親子の対話」その8

 

佐々木 眞

 
 

IMG_1270

IMG_1264-2

 

「オレの生徒にクズはいねえんだよお!」
耕君、それなあに?
ドラマの「GTO」ですお。

「お父さん、体が悪くなったら病院でしょ?」
「そうだよ。耕君どこか悪いの?」
「悪くないお」
「悪くなったらお父さんにいうんだよ」
「はい、分かりました」

「お母さん、ぼく常磐線好きですお」
「そう、じゃあ今度乗ろうか?」
「嫌ですお」

「アイラブユーって好きなこと?」
「そうよ」
「アイラブユー、アイラブユー」

「バージンロードって結婚するとき?」
「そうよ」
「バージンロード、バージンロード」

「ビッチョビチョ、ビッチョビチョ。ビッチョビチョって、汚いことでしょ?」
「そうだよ」
「ビッチョビチョ、ビッチョビチョ、ビッチョビチョ、ビッチョビチョ」

「めちゃすきやねん、めちゃすきやねん」
「なにそれ?」

「お母さん、のんだくれってなに?」
「お酒を飲みすぎて迷惑をかけることよ」
「のんだくれ、嫌ですねえ」

YMCA GO GO GO!
YMCA GO GO GO!
お母さん、ぼくYMCAのリーダーですよ!

「お母さん、たしなめるってなに?」
「そんなことしちゃだめよっていうことよ」
「お母さん、たしなめる、たしなめよう、たしなめておくれようってなに?」

「君をなくしたら悲しいでしょ?」
「悲しいですよ」
「君、君、君」

「営業ってやることでしょう?」
「そうだよ」
「営業なんて、営業なんて、営業運転されることになりました」

「ついては」ってなに?
「それについては」ということよ。

「車体構造ってなに?」
「車体の構造だよ」
「車体構造は、ほぼこうなっています。6扉車登場ね」

なんで緒形 拳「しゃべるな」っていったの?
苦しいからでしょ。
しゃべると気持ち悪くなるからでしょ。

「お母さん、ぼくはしあわせになります」
「耕君、しあわせなの?」
(無言で2階に消える)

「お母さん、お金は買い物するときでしょう?」
「そうよ」
「買い物するのはぶたぶた君だお」

「気象情報って、天気予報のことでしょ?」
「そうだよ」

「お父さん、仮面ライダー好き?」
「好きだよ」
「ぼく、仮面ライダー好きですお。こうたろうさん、好きですお」

「お母さん、おもてなしってなに?」
「気持ちよくすごしていただくことよ」
「そ、そうですよ。そうですよ。おもてなし、おもてなし」

「お母さん、気まぐれってなに?」
「自分の好きなことばかりしていることよ」
「気まぐれ、気まぐれ、気まぐれですお」

ふきのとう舎へ行く時は、桜ヶ丘駅で、降ります。
藤沢から各停に乗るか、急行で乗り換えることができます。
長後から出発して、急行に乗ったら、大和まで行ってしまいます。
ふきのとう舎に行くに時は、大和まで行かないようにしましょうね。

「お父さん、6のさかさまは9?」
「そうだよ」

「お父さん、ごきげんようの英語は?」
グッドバイ、シーユーツモロー。

「お母さん、黙祷ってなに?」
「目をつぶって祈ることよ」

「ぼくキシモト歯科いきませんお、いきませんお」

タクちゃん「しあわせになろうよ」みた?
きっとみたと思うよ。
「しあわせになろうよ」は黒木メイサでしょ?

「お父さん、お母さん治ってほしいですねえ」
「そうだねえ、治ってほしいね」
「お母さん、早く良くなってね」

「お母さん僕は協力しますよ」
「なにに協力するの?」
「キョウリョク、キョウリョク」

たまもりゆうたですお。「幸せになろうよ」、の。

「お父さん、今年も旅行でお土産買いますお」
「ああそう。よろしくね」
「分かりました」

ハッケヨイ、ノコッタ、ノコッタ
お相撲ですよ。

「ヒロタカ君、クミコさんと結婚したんでしょう?」
「そうだよ」

「お父さん、セイザブロウさん、綾部の下駄屋でしょう?」
「そうだよ」
「ぼく、下駄好きですお」

「ぼく、のぞみ幼稚園好きですよ」
「のぞみ幼稚園、誰が通ってたの?」
「タクちゃんとリョウちゃんですお」

お父さん、ぼく「どんと晴れ」のナツミさん、好きですお。

「お父さん、ぼくアジサイ好きですお」
「何色が好き? 青? 赤?」
「両方ですお」

「お父さん、5はいつつですお」
「そうだね」

「お父さん、横浜線の205系はどこ行きましたか?」
「どこへ行ったの?」
「インドネシアだお」
「へええ、インドネシアかあ」

「お父さん、ぼくクワイ好きだお」
「そうかあ」
「サトイモ好きだお」

「お母さん、ぼく今日ハス見に行きますお」
「はい、行きましょうね」

「お父さん、そんなことないの英語は?」
「ノットアットオールかな」
「お母さん、そんなことないって、どういうこと?」

「ぼく、がっかりしなかったよ」
「なにをがっかりしなかったの?」
「お母さん、がっかりってなに?」

「お父さん、遅くなったらだめでしょう?」
「遅くなってもいいよ」

「お母さん、ごきげんようってさようならのこと?」
「そうよ」
「ごきげんよう、ごきげんよう」

「お母さん、誘拐ってなに?」
「ひとをつかまえることよ」
「誘拐いやですねえ」

「お母さん、心臓飛び出したら?」
「びっくりですよ」

お母さん、杉浦さん「トイレットペーパーそんなに使わないでください」て言ったよ。
そうなの。

「お母さん、簡保は簡易保険でしょ?」
「そうよ」

ぼく「ぶたぶた君のお買いもの」好きですお。
お母さんも好きですよ。

高橋さん、「またあした」っていったお。
そうなの。

お父さん、渡辺千尋君ね。ぼく順子さん。
「千尋、ダメダメ」
「お母さんごめんなさい」

「先生」と呼んだらダメですよ。「さん」と呼ぶんだよ。

「お母さん、これオオバギボウシの葉っぱでしょ?」
「そ、そうよ。驚いた! 耕君よく知っているのね」
「このオオバギボウシ、どうしたの?」
「昨日小田原のオオバさんから頂いたのよ」
「オオバギボウシオオバギボウシオオバギボウシ」

「耕君、人生楽しいですか?」
「楽しいよ」

 

 

 

20年前に書いた詩が一つ見つかったっちゃ

 

鈴木志郎康

 
 

20年前に書いた詩が一つ見つかったんで、
これって、
俺っちが
ほんとに書いたのかいなって、
驚き。
まっ、
なんとか生かしたいってんで、
この詩、
ここに書き写しちゃおうっと。
「浜風文庫」に、
発表しちゃおうっと。
ぶぶん、じゃんじゃん。

今日からは
あらゆるものがタダという
日が来た

パン屋では
店に置かれているパンは
すべてただ
つまり、
お金を払わないで持っていって
もいい
八百屋でも
キュウリ、トマト、レタス
みんなただ
スーパーにも
品物がいっぱいあって
ぜえーぶただ
欲しいだけ持っていっていい
16ミリフィルムも
ただだし
カメラもただ
現像もただだから
映画もすきにできる

店の人たちは
持っていかれれば
いかれるほど
喜んでいる

電車もただだから
好きなところへいける
ただの温泉旅行に
行って
ゆっくりと

勤めの人たちは
給料はもらえないが
仕事を面白がって
やっている

工場は
ただで資材を持ってこられて
製品をどんどん作っている

ただの温泉旅館で
ゆっくりと
湯につかっている人もいる

なにしろ
今日から
あらゆるものが
ただなのだ

ってね。
これって、
貨幣経済の否定じゃんか。
ぶぶんん、じゃんじゃん。
パン屋さん、ニコニコ、
八百屋さん、ニコニコ、
スーパーの人、ニコニコ、
主婦たち、ニコニコ、
子どもも、ニコニコ、
勤め人さんたち、ニコニコ、
いいじやんか。
ぶぶん、じゃんじゃん。
俺っちって、
なに考えてたんだ。
忘れちゃったよ。
なんで発表しなっかったんだろ。
分からないっちゃ。
いつ書かれたのか、
やぶかれたノートの切れ端には、
「窓辺の構造体」ってメモがあるから、
そのタイトルの詩が「ユリイカ」に発表された
1996年9月後の
この詩の冒頭の「10/15」ってことは、
10月15日に書かれたんだ。
二十年前だっちゃ。
忘れてちまって、
わからない。
ぶぶん、じゃんじゃん。
なんでこの詩を書いたかも
忘れちゃったけど、
まあ、面白い。
ぶぶん、じゃんじゃん。
ぶぶん、じゃんじゃん。

そう言えば、
俺っちって、
詩って、
どんどん書いて、
どんどん忘れるってこっちゃ。
ぶぶん、じゃんじゃん。
ぶぶん、じゃんじゃん。

 

 

注 この詩が見つかったいきさつ。破かれたノートの切れ端に書かれていた。そのノートはちょとメモ書きして、放り出してあったそのノートで、麻理が病気上がりの猫が食べた餌の量を記録するの使うというので、初めからのメモの12ページを切り取った。そこに書かれていた、発表されたこともなく、捨てられるかもしれなかった詩だ。このノートの切れ端の初めのところに「窓辺の構造体」というメモがあるので、この詩が書かれたのは、おそらく「窓辺の構造体」が1996年9月に書かれたので、詩の頭に10/15とあるからその10月15日に書かれたと思える。