あしたの花火 2

 

長田典子

 
 

あさ
呼ばれたような気がして
庭に出ると
いっせいに
テッポウユリが
咲いていました

ミントグリーンの葉のうえで
あさつゆが
はずんでいました

つるつるの球体に
白や赤や緑や青を
にじませて

ふいに
シランの茎をたわませ
滑り降りてきたのは
オナガでした
何かを確かめるように歩き回ってから
いきおいよく
飛び立っていきました

目が合いました

テッポウユリは
純白の声で
言いました
くちぐちに

撃ち殺せ!
血を流せ!

わたしは 頭をたれました
胸に手をあて
ひざまづきました

ミントグリーンのはっぱの上で
あさつゆは
ぶるぶると
ゆれました

白や赤や緑や青が
マーブリング模様さながら
混ざりあっていき

ぐちゃぐちゃ

なりました

ぐちゃぐちゃの
かやくだまです

わたしは います
ここに います

ぐちゃぐちゃですが
ぐちゃぐちゃのまま

「けっ、詩人さんよ 気取りなさんな」

撃ち殺せ!
血を流せ!

そら たかく
オナガがぴゅるぴゅる
聞いたこともない
あをーい声で
なきました