新緑の候

 

狩野雅之

 
 


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FUJIFILM X-E3, FUJINON XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS

 


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FUJIFILM X-E3, FUJINON XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS

 


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FUJIFILM X-E3, FUJINON XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS

 


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FUJIFILM X-E3, FUJINON XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS

 


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FUJIFILM X-E3, FUJINON XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS

 


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FUJIFILM X-E3, FUJINON XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS

 


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FUJIFILM X-E3, FUJINON XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS

 


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FUJIFILM X-E3, FUJINON XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS

 


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FUJIFILM X-E3, FUJINON XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS

 

 

 

新・冒険論 04

 

蚊が
飛んでる

右眼の視線の外にいる

このまえ
映画をみた

ON BODY AND SOUL
ハンガリーの女性監督の作品だった

夢のなかに鹿がいた
食肉処理場で牛の首が落とされた

そこに
男と女はいた

どうなんだろうか
着想がないという着想だった

今朝
物干場で磯ヒヨドリの声を聴いた

 

 

 

由良川狂詩曲~連載第23回

第7章 由良川漁族大戦争~赤い点

 

佐々木 眞

 
 

 

さあ、喜んだのは由良川の善人善魚たち。死んでしまったライギョの数を勘定しながら、「丹波数え唄」の大合唱が、あたり一面から湧きおこりました。

♪一番はじめは一の宮
二で日光東照宮
三で讃岐の琴平さん
四で信濃の善光寺
五つ出雲の大社
六つ村々地蔵尊
七つ成田の不動さん
八つ八幡の八幡さん
九つ高野の弘法さん
十で所の氏神さん
これだけ信心したならば
浪ちゃんの病気もなおるでしょう
ポッポッと出る汽車は
浪子と武雄の別れ汽車
再びあえない汽車の窓
鳴いて血をはくほととぎす

ここで、ネットに突き刺さったきりのライギョたちの前で、パンツを脱いで白いお尻を振り振りしながら、ひょうきんナマズのテッちゃんが、「もういっちょう!」とアンコールをせびりました。

♪一かけ二かけ三かけて
四かけ五かけて橋かけて
橋の欄干腰おろし
はるかむこうを眺むれば
十七八の姉さんが
花と線香を手に持って
姉さん何処へとたずねたら
わたしは九州鹿児島の
西郷隆盛娘です
明治十年戦役に
撃たれて死んだ父上の
お墓詣りをいたします
お墓の前で手を合わせ
南無阿弥陀仏と眼に涙
もしもあの子が男なら
アメリカ言葉をならわせて
胸に鴬とまらせて
ホーホケキョと鳴かせたら
どんなに喜ぶことでしょう

今夜ここでのひとさかりが終わると、喜びの次には、怒りがやってきました。
この時とばかりに宿敵の喉笛にくらいついて、日頃の鬱憤を晴らそうとするスッポンのポン太。
口ぜんたいが吸盤になっているのをいいことに、ライギョのお腹にぶちゅっとキスをして、まるで吸血鬼のようにチュウチュウと音を立てながら、血を吸いだしたカワヤツメのヤッちゃんなど、親子兄弟親戚の多くを毎日のように殺され、(なかにはイオカワのオイカワ三世のように一家全員が皆殺しの目にあった悲惨な家族も少なくありません)か弱い魚やその仲間たちは、にっくきライギョたちに思い思いの復讐をしようとしました。

その時でした。現役最長老のオオウナギが、右の胸エラを静かにあげて、みなを制しました。

♪みなの衆、みなの衆、お待ちなせえ。事をせいては、いけないよ。
アラーに唾するものは、自分に唾するも同じこと。
左の頬を殴るものは、あの世で右の頬をナイフで抉られん。
ブッダの妻を奪いしナーガンダも、ついには地獄に落とされた。
地には愛。天には星。仲佳きことは、善きことなり。
人にやさしく、とブルーハーツも歌っておる。
岩窟王エドモンド・ダンテスも、罪を憎みて魚を憎まずと申しておった。
みなの衆! どうかもうそのへんで無益な殺生をやめてくれえ。

最長老の説得が功を奏したのか、さしも怒り狂っていた魚たちも、次第に落ち着きを取り戻し、何年振りかで戻ってきた川の静けさを確かめるように、仕掛けネットの近くをぐるぐると旋回しながら、手に手をとって「美しく青き由良川のワルツ」を踊ったりしているのでした。

さてその頃、ケンちゃんは、若鮎特攻隊の残党たちと共に、天井からわずかに朱色の光が差す千畳敷の大広間に、疲れきった身をお互いに労わっていました。

「ははあ、ライギョの奴らめ、まんまと仕掛けにはまったな。ざまあみろ。アユ君、君たちも命を投げ出し、多くの犠牲を出しながら、由良川に生きる友達みんなのためによくやってくれたね。ありがとう! ありがとう!」

と興奮さめやらず、べらべらしゃべりまくるケンちゃんは、お父さんに似たのでしょうか。

「さあ、もうこれで大丈夫だろう。そろそろ仕掛け網のところに戻ってみよう。きっと大漁だと思うよ」

と、アユたちに声をかけながら、ナイフをぐいと口にくわえ、タンホーザー序曲をBGMにしながらゆっくり浮上しようとしたその時、ケンちゃんの視線の隅っこで、なにやら赤い点のようなものが、チラっと動いたような気がしました。

「おや、あれは何だ?」

と、ケンちゃんが向き直って、もういちど確かめるようにその方向を見やったときには、その赤い点はすっと搔き消えていたのです。

それからケンちゃんは、後続の若鮎特攻隊に、「テテレコ・テレコ」、すなわち俺に黙ってついてこい、の信号を送りながら、ふたたび急速浮上を開始しました。
さすがにこの深さですと水温もかなり低く、泳ぎながらケンちゃんは、思わずブルルと身震いをしました。

いつもは柳の木が茂る水辺のところからは、かすかに光線が差し込んで、見通しもそれほど悪くはないのですが、今日に限って水がよどんで濁り、一足キックするたびに、泥がそこいらから湧きおこってくるような錯覚にとらわれます。
それでも、もう少しで仕掛け網のところまでやってきたケンちゃんは、何気なく後ろを振り返ってびっくりしました。後に続いているはずの若鮎特攻隊がいないのです。
ついさっきまでブルーハーツの「リンダリンダ」と山本リンダの「狂わせたいの」をメドレーで歌っていた可愛らしいアユたちの姿が、どこにも見えないのです。

ケンちゃんの背筋に、冷たいものが走りました。

そして呆然としてあたりを見回しているケンちゃんの目の前に、さきほどの赤い点が、再び現れたのです。しかも、2つ。

 

 

つづく

 

 

 

八十三歳の優しい気持ち

 

鈴木志郎康

 
 

庭のビョウヤナギの花が
次々に咲いて、
初夏の
爽やかな風に揺れている
2018年の、
五月十九日の
今日、
わたしは、
八十三歳になった。
なってしまった、
ね。
ね、
相手に向かった、
ね、という終助詞。
そのねの相手って、
誰なんだろうね。
ね、
っていうと、
優しい気持ちになってくる。
八十三歳で、
優しい気持ちになってくる。
なんか、
いいね。

 

 

 

新・冒険論 03

 

今日も

着想がない
ここのところ

チェット・ベイカーと
パッヘルベルのカノンを聴いている

戸川純も歌ってた

昼過ぎに眼医者から帰った
飛蚊症だそうだ

右眼の視線の外に
蚊が飛んでる

黒い蚊がいる

そこに
林があった

霧が
風に流れていった

着想がないという着想だった

 

 

 

白いカーネーション

 

長田典子

 
 

こどものころ
母の日に
白いカーネーションを胸につけた子がいた

あのころ
わからなかった
わからなかったなぁ
その白が
どんなにふかい哀しみの色だとは
わからなかったんだ

ごめんなさい……

40歳をとっくに過ぎているのに
ベッドに横たわる
あなたの胸に顔を押し付けて
うれしい?
と聞くと
あなたは、こくん、と
うなずきました

脳幹梗塞で倒れ
手足も動かず口もきけず
耳だけが聞こえるあなたのために
あの年は
パジャマを買うことにしました
レジに並ぶ前から
涙が止まらなくなりました
母の日のプレゼントに
なぜ パジャマしか選べないのかと
包装されたリボンの箱を抱えて
泣きながら歩いて帰りました

西日の射す部屋から
わたしはあなたによく電話をしていました
気持ちが塞ぐと
成人してからさらに 20年以上も経つのに
あなたへは電話ばかりしていました

あの午後
あなたは
なんだか ぼんやりしていて
もう何もやりたくない、と言うのです
ちゃんと「御焼きの会」に出なくちゃだめだよ、
お習字とお茶のお稽古にも休まずに参加して、と
わたしが熱を込めてしゃべればしゃべるほど、返事があいまいになってきて

その数日前に電話をしたときは
頭が痛くて痛くて横になってる、と言っていたのです
すぐに病院に行ってと言ったら
今日は誰もいなくてね、と

あの午後は
経営する工場の事務所にいて
事務員さんたちとお茶を飲んでいる最中で
わたしはすっかり安心していたのに

電話を切ったとたん激しく嘔吐したという
布団に入って横になったまま
翌朝には呼びかけても返事もできず

そのまま

5年以上ベッドに横たわっていた母
仕事で忙しかった日々の母からもらえなかったものを
とりかえすみたいに
母のベッドの横に座るたびに
わたしは
母の胸に顔をうずめては
うれしい?と聞いたのだった
いつも かすかに汗の匂いがした
あの匂いを
母の日になると思い出す
来年は遅ればせながらの13回忌

わからなかった
わからなかったのだ
母の日に
胸に白いカーネーションをした子の気持ちを

今ならわかるなんて
言えない
言えるわけがない
あのころ
あの子は5才だった

ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい………

わたし
こんなにおばさんなのに
白いカーネーションの寂しさを
受けとめきれないのです

 

 

 

万事快調

 

佐々木 眞

 
 

 

見よ東海の空明けて
今日は朝から日本晴れ
わが家の桜も満開だ
4月8日は、やっとせえのせえ

モンシロチョウが舞っている
ツバメもすいすい飛んできて
コジュケイ一家が「チョットコイ」
4月8日は、やっとせえのせえ

思えば去年のクリスマス
一夜で丸焼け一軒屋
今では更地になりました
4月8日は、やっとせえのせえ

お寺の前の道路では
インドの美少女 バク転だあ!
くるりくるりと身をひねり
4月8日は、やっとせえのせえ

おお 狼犬があくびする。
でぶでぶ猫が 顔洗う
聖徳太子は、実在したか?
4月8日は、やっとせえのせえ

3.11 あったのか?
9.11 あったのか?
12.8なんて あったのか?
4月8日は、やっとせえのせえ
4月8日は、やっとせえのせえ

 

 

 

 

道 ケージ

 
 

何か 大きな鳥に
踏みつけられている
変な息 出しやがった

おい 一つ鳴いてみろよ
野郎
嘴 反り返らせ
青田赤道かよ

悪かった
食い込む鉤爪
でかすぎんだよ

鳥だろうよ
畜生
ったく畜生だ
重みかけやがって

睨むなよ
生き様かよ
勘弁してくれ

なに うえ見てんだよ
墜ちて来た
「逆光」の空

おめえ 飛べねえな
冗談だ 冗談
糞しやがった
卵白みてぇな

さては
雌か
握り直すなって

図星かよ
よせよ
そこ つまむなよ
重ぇーなぁ

いつから踏みつけにされたのか
いつまで続くのか