人とそのお椀 04

 

山岡さ希子

 
 

 

横座り 椀が手から離れて背後にある 左手をひねって掴もうとしている あるいは掴んでいたが 離れてしまったのかも 
椀の方を見ようと 頭を傾げて 俯いている
右手足は不明 右手はたぶん床につき 体を支えている 右足は投げ出されているだろう 苦しい体勢

 
 
 

内職

 

道 ケージ

 
 

コオロギの頭をそっと撫でて
足のギザギザに触れてあげる
そんな面倒な内職だけど
丁寧に時間をかける

透明な羽根だけは触わらない
思い込みの露をためた
虹の足の泉で
緑線を洗うらしい

選り分けるだけでないことを
理解せねばならない
付け加える必要はない

生き様が奏でる
甘い気持ちは見透かされ
たちまち弾かれる

イカズチを操る金髪の男
太り過ぎだよ
踏むなよ

一瞬では
どうしても遠くに行けない俺ら
愚かさだけ晒す

とびっきりの錐で
頭頂を撫でてあげよう