ドン・キホーテの聖なる迷宮

 

尾内達也

 
 

 

廃墟というものが光なのだとすると
そのドン・キホーテは
たしかに廃墟である
二階は封鎖され
三階と四階は
光の駐車場になっている
一階は迷宮のようにどこまでも
奥がある
角には
毒々しい赤と黄色の
ゲームセンターがにぎやかに点滅し
インドカレー屋がスパイスの香を放つ
外人さんが喜ぶという
古着屋がヒョウ柄のパンツを並べると
もう
槇の生け垣の
U字型の道をゆく
一人のドン・キホーテだ
真夏の光
どこまで行っても
だどりつけない
U字型の道を前後しながら
ひとに寺を尋ねる
迷宮の中で
説明の言葉はまったく意味をなさない
口々に口ごもる 散文
泳ぐまなざし
その迷宮は城であり
サンチョパンサを失った
一人のドン・キホーテが
永久にさまよっている
廃墟というものが光なのだとすると
そのドン・キホーテは
たしかに廃墟である

 

 

 

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