女声コーラスの「赤とんぼ」

音楽の慰め 第21回

 

佐々木 眞

 
 

 

秋晴れの午後、久しぶりに生の音楽に耳を傾けました。
逗子文化プラザなぎさホールで、女声合唱団「ぶどうの会」コンサートを聴いたのです。

じつは私はコーラスというのは苦手でして、高校生や中学生がコンクールで演奏するのをたまにラジオで聴くくらいですが、この日登壇したのは19人のいわゆる後期高齢者のおばんさんばかり。

創立20周年とはいえ「ぶどうの会」はアマチュアのメンバーなのでいったいどうなるのかと心配していたのですが、案ずるより産むがやすし、さながら少女のように純な歌声が流れてきたので、驚くやら安心するやらでした。

プログラムの前半は、はたちよしこ作詞・吉岡弘之作曲「レモンの車輪」、木下牧子作曲の5曲の合唱曲集、中盤は上田眞樹編曲も「日本抒情歌」、後半はみなづきみのり作詞北川昇作曲の組曲「やさしさとさびしさの天使」でしたが、指揮者の杉山範雄、ピアノの石原朋子さんの好サポートもあって、お腹いっぱいのご馳走を頂戴したような気分になりました。

近代から現代曲までさまざまな曲が演奏されましたが、やはり昔から耳に馴染んだ「朧月夜」、「荒城の月」、「夏は来ぬ」、「赤とんぼ」などの日本の歌が心に響きました。
ただしこれらの名曲をあまり調子の乗ってモダンに編曲すると、せっかくの古朴な樂想を傷つけてしまうことがあるので、若い編曲家は気をつけてもらいたいものです。

それにしても、休憩をはさんでおよそ2時間を見事に歌い通した出演者には、拍手喝采を贈りたい。しかも全収益金が沖縄久米島に設立された福島の子供たちの保養施設の活動に寄付されるとあらば、なおさらのことです。

 
 

福島より沖縄に来た子らのため十九の老女声張り歌う 蝶人

 

 

 

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