木々たちのように

 

正山千夏

 
 

サクラ咲く
環八のきわ
ごうごうなるクルマ
ざわざわざわめく
固い心臓
に刺さる小さなとげは
不思議な殻に包まれて眠る
(漫画「ブラック・ジャック」に
空0似たような話があったっけ)

いま、この瞬間
私は大丈夫だ
けれど
この今を積み重ねていけば
私の人生は大丈夫なのか

四つ葉のクローバーの声は聞こえない
私の自転車はゆっくりと走る
動体視力のすぐれたカラスのバクダンは
けれど今回はわずかに早く着弾し
自転車の前カゴへ落ちた
三つ葉のクローバーで拭き取った

華々しく咲くサクラを尻目に
馴れ馴れしくて敬遠していた
サルスベリの木にすがって
見失った目標を探している
夏に咲く花だから
つぼみさえまだ枝のなか

あの大きなモミの木は昔
川沿いの電話ボックスの横にいた
何十年も先の未来への
タイムマシーンではないけれど
あの電話ボックスに入って
受話器を取ってみたら
今の母の声が聞こえた

いま、この瞬間
私は大丈夫だ
木々たちのように
根を張る土壌に
たっぷりの雨がしみこんだ

 

 

 

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