帰郷

 

道 ケージ

 
 

陽水の『断絶』では
「母は今年九月で六十四
空0子供だけのために年とった」

ウチの母は今年十一月に八十七
全て忘れてしまいそうだから
米寿の祝いを早めに
だから博多に帰る

「早く家に帰りたか」
圧迫骨折で入院中
一人住まいの自宅で転ぶ

「この病院は入ったら二度と戻られんって
空0言いよったよ」
誰がね
(後見申立書に捺印)
そげなこと言うわけなかろうもん

「あんたの兄貴たい
空0バスん中で独り言のように言ったことがあったと」

宗像の小さな家で正月に
庭でバトミントンしたな
物干し竿がネット代わり

父は和服に脛毛出し
母のわりと正確なサービス
欺しあいだな

かあさん、血ぃ出とうよ。怪我したと?
ズックを洗う母に駆け寄った
「ケガやなかとよ」

そんなこと もう覚えてないか
玄海灘 黒く
友泉亭如水庵に夕陽、近づく

必死の思いで故郷に帰る

 

 

 

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