サバイブの微光に殺られる

 

萩原健次郎

 
 

 

わたしは、わたしの胃のなかにいるちいさな子と

ちろりちろりと会話をして

川沿いの道を、ひたすら登っていった。

それらは、知らぬ顔で、わたしを憎んでいた。

わたしは、脚を前へ前へ動かしていた。

歩みと言うのだろう。

朝は、毎朝のように、死にたい。

首を括って、無くなりたい。

わたしはもう、燃えている。

赤い肉は、焦げていき

胃の中の子を、道の面に投げだす。

貌を落として、わたしの貌と子が、遊んでいる。

光は、天に昇っていく。

光は、笑っている。

わたしを、笑ってはくれない。

薄く削がれた愛が、七輪の上の

金属の網であぶられている。

一抹の、生もまた、光に焼かれ笑われて

わたしの物体は、どこかから、大声で叫んでいる

さよならに、呼び返している。

わたしの身など、誰かにあげる。

微粒の生も、生きたいか。

泥水の中にいる、粒粒の遺恨も

臓の恋人も。

わたしの、微粒子。

やがて不要になる胃液。

胃の中の子。

陽は昇れ

海に沈め

ギャグを言え。

サバイブの微光に。

 

 

 

サバイブの微光に殺られる」への1件のフィードバック

  1. 樹々の葉の樹の内で私は着たままの汚れた衣服のまま
    手の平に小銭を乗せ、愚かにもそこでひざまずき陽を見上げ
    どうか、お金と糧をと、顔を上げ呟いた。何事もないと知らずに、
    それが慈悲とは知らず。それきり神は黙ったようだった。私は考え込んだ
    金も糧もないのに、戸惑いながら、安堵した。しばらくの間。
    それこそが、人生で無かっただろうか。

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