永劫回帰の歌

 

佐々木 眞

 
 

ケーシー高峰 死んぢゃった
シーモア・カッセル 死んぢゃった
どんどん どんどん 人が死ぬ
じゃんじゃん じゃんじゃん 人が死ぬ
次に死ぬのは 誰だろう?
有名人は 別として
歳の順番から いくならば、
我が家で死ぬのは ボクだろう
確率的には まずボクだろう

その次 死ぬのは 妻だろう。
ぜったいに死んでほしくない妻だろう
遺されたのは 可哀想な 長男次男
長男なんか 障害者だから
次男は さぞや 大困りするだろう
するだろうけど なんとか ぐあんばれ
無我夢中で ぐあんばれば
そのうち なんとか なるだろう
ふときがつけば 死んでるだろう

死んでしまえば こっちのもの
もう障害も 健常も
金も 名誉も 地位もなく
生まれたまんまの 裸になって
肉も 脂肪も 溶け去って
堅い骨さえ 灰となり
土に混じって 炭となり
雨に打たれて 花となり
ある晴れた日に 宙に舞う

宙に舞え舞え カタツムリ
成層圏から銀河系
そのまた先のブッラクホール
ここは「事象の地平線」*
真っ暗くらの 穴の中
身動きできない ほら穴で
コウちゃん ケンちゃん ミエコさん
可愛いムクちゃんも 加わって
今宵ここでの 花盛り

夢にまで見た 一家団欒
そこに かあさん おとうさん
じいちゃん ばあちゃん 親戚一同
みんな揃って 顔を出し
やあ こんにちは ひさしぶり
みんな 元気か 変わりはないか
なんの 変わりがあるものか
生まれも 死ぬも 夢の中
生まれも 死ぬも 夢の中

この世も あの世も ひとつながりで
どんどん死ねば どんどん生まれる
誰一人 失われるものは ない
何一つ 失われるものは ない
回れや 回れ 極楽メリーゴーランド
南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏
みんなを乗せて ぐるぐる回れ!
南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏
みんなを乗せて ぐるぐる回れ!

 

 

*「事象の地平線」
物理学における相対性理論に基づいた概念の一。光や電磁波などの観測によって情報を知りうる領域と、そうでない領域の境界。ブラックホール周辺で、光が外部に逃れられない範囲の境界面。また、膨張する宇宙で、観測者から遠ざかる速度が、光速を超えている領域との境界線。「デジタル大辞泉」

 

 

 

永劫回帰の歌」への2件のフィードバック

  1. このリズムのままに死んでいきたい。死んだ中原、永訣の歌。ただし、ほらほらこれが…なんて、嫌ですよ。死んだ家族の団欒もあるのかなぁ。たけやぶやけた。回文の薄気味悪さとは、すなわち大阪みたいな明るそうな朗らかな土地にも回文のごとき小難しい知性だの頓知だのが必要な矛盾でしょうか。

    • 前回の「令和行進曲」のノリで、ただひたすらまっすぐに突き進む歌を書いていたら、いつのまにか途中でひんまがって、回文ならぬ球文になってしまったずら。

佐々木 眞 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です