塀 180818,180819,180820.

 

広瀬 勉

 
 


01:180818 愛知・名古屋守山

 


02:180819 和歌山・和歌浦

 


03:180819 和歌山・和歌浦

 


04:180819 和歌山・和歌浦

 


05:180819 和歌山・和歌浦

 


06:180820 和歌山・和歌山吉田

 


07:180820 和歌山・和歌山吉田

 


08:180820 和歌山・和歌山中之島

 

 

隘路を歩いた

 

祖母がいた

三毛猫が
いた

昔はここしかなかった

三毛猫はなんどか
お母さんになった

畳にだまって座ってた

手が白く
手をそろえて

座ってた

目を瞑った

垣根があり
祖母の

育てた野ばらの
白い花が

咲いていた

祖母は

窓にもたれて
だまって白い花をみてた

なにも言わなかった
なにも言わなかった

一昨日かな
駒場で

Yiwu Liao廖亦武の”大虐殺”という詩を聴いた

叫びだった
挽歌だった

失ったものがあまりにも大きい
失ったものがあまりにも大きい

廖亦武のことばはあまりにも大きい
無数の沈黙に支えられている

雪のたくさん降るのをみた
簫の音を聴いた

それでも
ひとは生きてしまう

なにも言わなかった
なにも言わなかった

祖母は
だまって

いまも
見ている

隘路を歩いた
隘路を歩いてきた

残ったひとは隘路を歩いてきた

 

 

 

サファイヤ‬

 

工藤冬里

 
 

昔はここしかなかった‬
箪笥には何もなかった
分業を見せられ
なりたいものになると言われ
薔薇園には行かず
不妊の女は歓声を上げる

昔はここしかなかった
ここからものを取り出していた
立ち往生できるだけ 幸せだった
何度でも名を忘れ
なりたいものになると言われ
びよびよ鰹には行けず
‪見たことを話し‬
聞いたことを行う

昔はここしかなかった
隘路を歩いた
アッバー
隘路を歩いた
片目でも 髪の毛がなくても
似顔を描いた
なりたいものになると言われ
サファイヤを土台として置く

箪笥を開けると
新聞紙が敷き詰められていた
二つの道しかなかった 見渡すかぎり

 

 

 

家族の肖像~親子の対話 その39

 

佐々木 眞

 
 

 

お母さん、被告人て、なに?
悪いことしたかもしれない人よ。

お母さん、人工呼吸て、なに?
苦しくなったときによ。

社長秘書て、なに?
社長さんのお仕事を助ける人よ。

お父さん、磯子行きは、磯子までしか行かないよね?
そうだね。

お母さん、Uターン禁止って、なに?
Uターンしちゃいけません、てことよ。

お父さん、舞踏会って、なに?
みんなで踊る会だよ。

お母さん、ムク、どこが痛かったの?
さあねえ、どこだろうねえ。

お母さん、ぼく、石原さとみと暮らしていますよ。
えっ、あの石原さとみと!? いやだコウ君、石原さとみの写真とでしょ?
ぼく、石原さとみと暮らしています。

成人、はたちになるの?
そうだよ。

お母さん、諸君て、なんのこと?
みんな、よ。

がっかりは、なに?
ガックリすることだよ。
がっかり、がっかり。

お母さん、船頭さんって、なに?
船を運転するひとよ。

私は船頭さんです。
はい。
船頭さん、船頭さん。

お母さん、人質って、なに?
悪い人に捕えられることよ。

さあ、なんでも聞きなさい。
よていのよの漢字、教えてください。
なぬ?

2019年2月
お父さん、明治はチョコレートでしょ?
ピンポン。では森永は?
チョコレート!
ブウウ。森永はキャラメルだよ。

お父さん、16はシクスティーンでしょ?
そうだよ。じゃあ17は?
セブンティーン!
よく知ってるね。

お母さん、花ざかりって、なに?
花がいっぱい咲いていることよ。

お父さん、あなどっちゃ、だめだよね。
そうだよ、あなどっちゃ、だめだよ。

お母さん、受けとめる、は?
受ける、よ。

ヒコクニンって、なに?
罪を犯したかもしれない人よ。

お父さん、最近、は?
ついこの頃のことだよ。

お父さん、いけませんは、ダメなことでしょ?
そうだね。

お母さん、ぼくは綾部のおばあちゃん、好きだよ。
そう。

お母さん、タイミングって、なに?
ちょうどいいときよ。

迷路って、なに?
まよいみちよ。
グルグル廻る。グルグル廻る。

お母さん、ぼくピノキオ好きですよ。
そう、お母さんもよ。

お母さん、激励会って、なに?
元気でやってね、と励ます会よ。

殺虫剤、シュツ、シュツでしょ?
そうだね。
シュツ、シュツ、シュツ。

お母さん、非常口って、なに?
なにかあったときに逃げる道。

成人、はたちでしょ?
そうよ。

お母さん、ぼく、鎌倉すきですお。
そう。

お母さん、成功って、なに?
とてもうまくいくことよ。

ゲームオーバーは、ゲームおわり、のことでしょう?
そうよ。

コウ君、ナナエちゃん、亡くなったんだって。
ナナエちゃん、どこで亡くなったの?
分からないけど、やすらかに亡くなったと思うよ。
ぼく、ナナエちゃん好きだよ。
お母さんもよ。

むかしは、以前、でしょ?
そうだね。

発車間際って、なに?
発車する前よ。

カドさん、どこでお仕事してたの?
国会図書館だよ。
国会図書館、どこにあるの?
東京の国会図書館だよ。
カドさん、引っ越したの?
したよ。

お母さん、知ってるはずって、なに?
知っているに違いない、よ。

コウ君、今夜は水炊きにしますか、それともオデンにしますか?
ぼく、オデンがいいですお。
そう。オデンには何を入れますか?
えーと、えーと、卵とお、ジャガイモとお、コンニャクですお。
分かりましたあ。

扁桃腺、どこ?
お口の中よ。コウ君、ノド痛いの?
痛くないですお。
そう? 大丈夫?
大丈夫ですお。

お母さん、「コロは屋根のうえ」お願いします。
はい。「みんなの歌」ですね。

平気は、大丈夫のこと?
そうだよ。

お母さん、交番って、なに?
お巡りさんがいるとこよ。

お父さん、ぼく目耕堂、好きでしたよ。
お父さんも好きだったよ。あの本屋さん、どこにあったっけ?
芋川病院の下の1階にありましたよ。
そうだったねえ。

各店って、なに?
それぞれのお店、だよ。

わたし、ヨシダキョウコです。
ヨシダキョウコさん、ツメを切りましょう。
はい、分かりました。

蓮は、白い花とかでしょう?
そうよ。

 

 

 

躯体

 

小関千恵

 
 

 

闇に溶かされた多くの輪郭に、
異物と呼ばれ
眠らされたひかりの子どもたちが
自らの知性の糸で、新しい水槽を紡いでいきます

「うわべの街に生えている僕らの足は、たまに引っこ抜いて洗うといいよ。」

それぞれの脈のせせらぎが聞こえていた

緊張による笑顔や
硬くなった腰に
あなたを探した

こんなに痒い空だって
こころだろう
しっかりと手を伸ばしたなら
きっとあの墜落気味の飛行機は
この腑に落ちてくる

空が反転しても
この躯体(からだ)は溶けない

 

 

 

きみはどう思う?

 

駿河昌樹

 
 

さびしさから
味わいが失せていかないように
ほんとうに
努めなければいけない

せつなさが
しぼるように
懐かしく
あり続けなければならない

冷えてきた森を抜けて
うすら暗いみずうみのほとりを
まだまだ
ながくながく行かねばならなかったとき
さびしいとも
こころ細いとも
まとめられなかった気持ちを
きっと
無事に戻ったら伝えたいと思ったひとが
何人かは
いたはずだっただろう?

そんなことが
ぼくらのこころのいのちというもので
そう
やはり
ぼくらあっての
ぼくらのいのちだった
と思うのだ

きみはどう思う?

 

 

 

くり返されるオレンジという出来事 4

 

芦田みゆき

 
 

11月17日

また、ハエが増えはじめる。

あたしは床にしゃがみこんで、オレンジを産んでいる。
つるん、つるんと、つややかな実が、黒いカーペットに産みおとされていく。
ドアをたたく音。
「誰? 近寄らないで!」
産みおとされたオレンジは、全部で六個。
あたしはそれを拾いあげ、よく冷えた水槽に浮かべた。
カチャッ、鍵のあく音。
けれど、誰も入ってはこない。
「あぁ、お腹がすいた」
冷蔵庫をあける。二〇個のオレンジがキチンと並んでいる。
牛乳ビンを取ってきてごくごくと飲んだ。
そして、ゆっくりとベッドに横たわる。

 
乳房が張っている。
わけもなく涙があふれてくる。
ハエの音。
ハエの音。
まぶたを閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

as an alien among the aliens

 

観音

というのは
音を

観る
のだそうだ

工藤冬里は
音を飲めといった

目で飲むのだろう

子どもの
目玉の

白が

青い
みひらいていた

子どもは目玉で音を飲む
音を観る

ひかりを

忘れ去る
流れ去る

as an alien among the aliens
異邦人の中の異邦人として

流れ去る

夏雲の
白く佇っていた

女は大皿のようにもみえた