眠たい縄文

 

萩原健次郎

 
 

 

空白空白空白空白0ぽんぽこ。

どこかへ抜けていけるのかもしれない。
禅院の水鏡は、あらゆる雑な事物や景物を吸いこんでいる。

空白空白空白空白0君が代に。

バキュームの青空、蟻の手の、先の触指の受信装置など。
ワガワガと、翻る破声など。

濃緑は、零度の位置で誘っている天空のまっくろくろけの欲動を
つまんでは食べ、食べては吐いて、池水の嵩を増している。

猿たち、その毛は光に撫でられて
ゴールデンに輝いてらあ。

――あなたより知能が低い、あたしらわあ、

空白空白空白空白0巌(いわお)となって

――くどくよりも、それならば九毒でまいろう

と三味にあわせて、池水の舞台を歩いて行った。

抜けていった此の世は、ちょっとしたジンカンの地獄で
善意と悪意の貸借が、とんとんになって
参る人たちは、もうへとへとに鬱になって

――飛び込んでやる
――やく漬けになる
と可愛く叫んでやる。

空白空白空白空白0千代に八千代に

そのような国があったなどと、誰が信ずるものか。
日が出るとか。
狐が憑くとか。

遷宮するとか。

――喜劇のように死んでやる

空白空白空白空白0苔の生(む)すまで。

役者になる前に僧侶となり神主になり、宮大工になり、
ヒノキの板に乗り

飛び込む。

その前に、一度猿になりたい。
赤い尻。

白蛇に。
赤い舌。

空白空白空白空白0細(さざれ)石の。

逆しまに、池が空から降ってくる。

――ゴジラの国へ。

 

 

 

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